絵具箱と子ざるの話

RIKO

絵具箱と子ざるの話


「これ、遠足の小学生たちが忘れていったのかな?」


 山の神社の近くで暮らす子ざるは、境内の隅にぽつんと置かれたスケッチブックと絵具箱を見つけました。

 箱を開けると、中には白、黄色、茶色、赤、青、緑、黒の絵具のチューブが入っていました。子供たちが絵を描く様子をよく見ていた子ざるは、わくわくしました。


 子ざるはしっぽを近くの水たまりに浸し、葉っぱの上に黄色の絵具をしぼって、それを溶かし、いつも一緒に遊ぶ子ぎつねをスケッチブックに描いてみました。


「よし、すごく上手く描けた!」


 子ざるは満足そうです。その時、本物の子ぎつねが駆け寄ってきました。灰色ねずみも一緒です。


「わぁ、すごく上手だね!」


 子ぎつねにほめられて、子ざるはすっかりうれしくなってしまいました。そして、今度は茶色の絵具で自分の姿もスケッチブックに描いてみました。二ひきで遊んでいる姿を描いたのです。すると


「ずるいや。僕の絵も描いてよ」と灰色ねずみが言いました。


 しかし、絵具の中には灰色がありません。子ざるはちょっとすまなそうに、言いました。


「ごめん、黒で描いてもいい?」


「そんなの嫌だよ! 僕の毛皮はつやつやの灰色でなきゃ」


 灰色ねずみは泣いて帰ってしまいました。


*  *


「ねずみくん、泣いちゃったね」


 子ざると子ぎつねがしょんぼりしていると、空が暗くなり、雨が降り始めました。二匹は、灰色ねずみの泣き顔を思い出すと、悲しくなりました。

 その時、子ぎつねが「あっ、灰色だ!」と声を上げました。


 子ざるは空を見上げ、灰色の雲を見つけました。雲の白と暗い黒を混ぜると、灰色ねずみの色になることに気づいたのです。


 さっそく白と黒を混ぜて灰色を作り、子ざるは灰色ねずみを描きました。


 灰色ねずみはそれを見て、大喜びしました。

 それから三匹はスケッチブックと同じように楽しく遊びました。そして、三匹は絵具箱を大切に閉じ、神社の元の場所に戻しました。色とりどりの思い出とともに。



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絵具箱と子ざるの話 RIKO @kazanasi-rin

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