カラスの心

灯トモル

第1話 カラスの心

電線に止まっているカラスが、聞いたこともないような声で鳴いている。

苦しげで悲しげで、まさに悲痛な叫び、という鳴き声だ。


「おまえ、どうしたんだ?」


地上にいる自分の声はカラスには届かないだろうが、そう問うてみる。

思った通り答えはなく、カラスは鳴き続けている。


仕方がないと通り過ぎようとしたとき、

ちょうど電線の真下、黒いごみ袋が落ちていることに気がついた。


こんな道の真ん中に不法投棄か、と思いながら近づき、はっとした。


違う、カラスだ。

黒いごみ袋と思ったものは、もう動かなくなったカラスだった。


もう一度、電線の上のカラスに問いかける。

「おまえのつがいなのか?」


答えはない。

いや、悲痛な鳴き声が答えなのかもしれない。


自分より小さな生き物をいたぶるカラス。

スズメや子鳩を追いかけまわしている姿を見たこともある。

子猫が攫われたなんて話も聞いたことがある。


命をもてあそぶおまえたちなのに、

自分のつがいを亡くしたら、そんな声で鳴くのか?


おまえたちがやってきたことを考えると、おまえに同情したくはない。

それなのに、その声を聞いていると悲しくてならない。


黒いカラス。

死んだらごみ袋と間違われてしまうカラス。

でも、おまえたちにも心があるのだな。


ならばカラスよ、

その悲しみを仲間に伝えてくれ。

これ以上おまえたちが、悲しみを与える側にならないように。

誰かの心を黒く染めることがないように。

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カラスの心 灯トモル @a_tomoru

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