第4話
土手。
精霊さんは、まだついていないらしい。
座り込んで、ひとり宴会を始める。このまえ半分だけもらった、ハンバーガー。新作。
待ったけど、来ない。
仕方がないので、開封開始。いただきます。
「いいのか」
「うわぁっ」
びっくりした。食べるまえに話しかけないで。
「知ってたのか?」
「えっ何が?」
わたしの左斜め後ろの、席の子。顔がいいのに無愛想でときどき授業中でもいなくなるから、周りからあまり認識されていない子。
「全部だよ。全部」
「なんの、全部?」
あっ忘れてた。
「どうぞ。新作ハンバーガーです」
「ありがとう。じゃなくて。俺のことだよ。いつから」
「いつから?」
あっ。精霊さんの出自。
「今日。声かけたじゃん。わたしに」
「それで?」
「それで」
「それだけ?」
「それだけです。いただきます」
新作ハンバーガー。おいしい。
「わからん。一声かけただけで分かるもんなのか。いただきます」
彼も、ハンバーガー。美味しそうに食べている。
「おいしいですか?」
「うまい。それに、なんか、新鮮な感じがする」
「新作ですから」
「いや、そういうことじゃなくて。夕陽を見ながら食ってるからなのか」
夕陽。この土手から見る夕陽は、いつも綺麗だった。
「いつもは月を見ながらだった」
「わたしがいなくなったあと?」
「そう」
「あなた、だよね。わたしを助けてくれたの」
「違うけど」
「うそつき」
「誰でもいいだろ。そんなの」
「わかりますけど。一応。これでも、何かにとりつかれていたことぐらい」
「なのに、俺のことは精霊だと信じて疑わなかった」
「だって、誰とも言葉が通じないのに、この土手にいるときだけ、声が聞こえて喋れるし、正直、ほんとに精霊だと思ってました」
「そりゃあどうも。ごめんなさいね人間で。しかも後ろの席の生徒ときた」
「それは、それでよかった」
「よかった?」
「わたしも。そっち側に連れていって」
終
華露の精霊 春嵐 @aiot3110
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