第3話

 ほどなくして、妖精は特定され、俺が直々に殺した。彼女の言葉を食った化物。なんとなく、自分の手で、葬っておきたかった。


 これで、彼女の日常は戻る。土手に座って途方に暮れる日々も、終わるだろう。


 同時に、彼女との縁も切れる。


 たまたま、声をかけて。それで返事が曖昧だった。だから、気付いた。


 同じように、声をかけてみるか。最後の、確認に。


「なぁ、ちょっと」


 学校。斜め右前の席。


「うん?」


 彼女。真っ当で、普通の反応。これでいい。


「いや、なんでもない」


 彼女の日常は、戻った。それでいい。


 小声で、誰にも聞こえない大きさで。通信を入れる。


「妖精は完全に殺せたと思う。受け答えも正常だった」


『そうか。お手柄だったな』


「たまたまだよ。たまたま。おっと」


 右斜め前から気配。


「ねぇ」


「あっ。えっ?」


「なに話してたの?」


「いや。ごめん先生には黙ってて。携帯で通話を少し」


 あぶねぇ。なんだこいつ。急に話しかけてくんな。


「そっか」


 彼女。なぜ通信に気づいた。秘匿回線だぞ。


「じゃあ、待ってるね。いつもの土手で。精霊さん」


「は?」


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