廃屋とその考察

@breast

怖い想像は頭の中に怖いものを産み出すことにもなるから

ある山間の集落に曰く付きの家があるという話を後輩から聞いたということで思春期の反抗心とやんちゃ心が抜けきれていない大学生とその仲間が何人か車で乗り付けたんです。


その家はかなり前から無人で、そこで人が自殺だかなんだかで、とりあえず人死にがあってその幽霊が出るって言われてるそうです。そこに肝だめしに行った人間が後日その家の前でうずくまって倒れていて冬のこともあって死んでたらしいです。


Aさんは友達達と件の廃屋に行くつもりでしたが、車に乗って出発した瞬間にバイト先の店長から当日シフトにできた急な穴埋めの懇願の電話が掛かってきたんです。普段はそうことがあっても、今友達といるのでとか言うタイプの人間なのにこの時はそっちに行かなきゃと思ったそうなんですよ。だから出発して全然経っていないのでその場で友達に断りを入れてバイト先にさっさと向かったそうです。


そこからAさんは店が閉まる時間までバイトに入って、店長からお礼と賄いのお土産を頂いて、今日は忙しくて疲れたからこれを食べてお酒飲んで寝ようと考えながら帰っていたらしいんです。誘いを断った友人達のことは忘れきっていたらしいんです。今日の出来事なのに、悪いことしたなとかどっかで集まってるなら今からでも合流しようかとかいう発想も無く、頭の中から友人の存在が消えたみたいになってたそうです。


結局Aさんは自宅で1人で晩酌しながら現在時刻を確かめる為に携帯を見た時にようやく友達の存在と友達からの着信履歴とメッセージを見て思い出したんです。電話を折り返しましたが不通でメッセージを見たら

「これで許してもらえると思う?」っていうメッセージと暗い家の恐らく玄関の中からガラスの引戸を開けた先の暗い外で土下座してる友達の写真が送られてきてたんです。一気に酔いが覚めたAさんは急いでメッセージを送ってきた友達に電話を掛けましたが繋がらず、廃屋の住所も聞いていないしどうしようか、警察に連絡するべきか考えていたら友達から、「もう大丈夫」と一言、メッセージが来たんです。それを見たAさんは何故かあぁもうダメかもしれないって諦めの感情が湧いて、その日は頭を抱えてしまって寝られなくなって朝を迎えたらしいです。


結局Aさんの友人達死んではいませんが、病んでしまって学校に来なくなって関係も自然消滅したらしいです。ここからはAさんやそれ以外の人達が聞いた友人達のあらましです。


友人達は後輩から聞いたという幽霊が出る廃屋に辿り着きました。家は木造の2階建てで門がありましたが空いておりそこから入って庭を通って玄関に至りました。この玄関の前で人が踞って死んでいたことを思いつつ、まずは庭をぐるっと見て回りました。縁側や窓、裏口は締め切られており中の様子は確かめることができませんでした。そして玄関に戻り、ここも空いていないかなと思って手を掛けると玄関は空いていました。入る時に暗くて分からなかったけど恐らく玄関の外側に貼ってあったであろう、何人たりとも侵入を禁ずると書かれたシワだらけの紙が落ちていました。もし貼ってあっても、彼らなら逆に試されていてこれを見て帰ったとなるとビビりとして見られると考えていたでしょうというのが周囲の評価でした。


張り紙を無視した彼らは玄関に入ると玄関は枯れた草やほこりで覆われていたそうです。そのまま中を探検した彼らは縁側には机やタンスが並べられていたり裏口は戸棚で塞いでいたのを見ました。空き家になって誰かが入るのを防ぐために家具をここに置いて最後は玄関から出て鍵を掛けたけど誰かしらが空けてしまって今に至るのではと考えたそうです。何かみやげ話にできそうな怖いものはないかと二手に1階と2階に別れて散策していると一階の廊下をわぁっー!と声をあげながら走る音が響きました。足音は2つあったそうです。二手に分かれていた彼らそれぞれが、一方の分かれた友達が何かを見て叫びながら逃げたと思ったそうです。探検気分だった彼らは戦慄しながら一階の部屋から、階段の上から玄関を見るとこちらに背中を向けいる人が立っていました。驚きそれぞれ1階と2階に済みに固まり息を潜めて恐怖に苛まれました。そして1階にいた方が再び様子を確かめる為に玄関をそっと覗くと誰もいないのを確認して2階の友人に連絡を取りこの家から出ることにしました。1階いた友人が玄関に差し掛かると2階から降りてきた友人を確かめる為に振り返ると1階の部屋の奥で誰かが首を吊っているのを見てしまって叫び声をあげてしまい、そして他の友人達も首吊りを見てしまったそうです。そこからはみんな記憶が飛んでいて、気がつくと車に乗り込んでいて恐怖しながら無言で帰宅したそうです。


ここからは私の考察です。この家では自殺だかなんだかで人死にが出たというのは本当で1人が魔の手にかかり玄関で力尽きて、もう1人が部屋の奥で自ら命を絶ったのではないかということです。そして玄関の中の枯れた草は恐らく献花でしょうね。誰かが手向けて放置されていたのでしょう。そしてこの家の恐ろしさの本質ですが、玄関以外は締め切られていてしかも家具で塞ぐ徹底ぶりです。玄関以外からの侵入の選択肢を無くしているように思います。そして玄関から入ると枯れた草もとい枯れた献花で覆われていた、これは侵入する者に献花を踏ませる仕組みになっているように思います。死者への手向けの花を踏むのはとんでもないことです。あえて呪われる行為をさせています。誰がそんな仕組みを作ったからは知りませんがその状況を作った人がいるならば相当な悪意に満ちていると思います。霊もそうですが、生きている人間の悪意も同居しているようにも思える最悪の場所と言えるでしょう。


あくまで想像の余地でしかないので何も確定的なことはありません。怖く想像しているだけで、そうと決めつけると逆に霊がそうなんだと思いそのように変質するので怖い方向に決めつけるのも良くないことです。それぞれの解釈で混ぜ込めて、いや、そうするとそれらが混ざったものに変質するだけですね。亡くなった女の子がトイレの個室で出るという話があったがその女の子は飛び降りて死んだ、手首を切って死んだ、薬を大量摂取して死んだ、首を吊って死んだと様々な噂話が混在して、いかにも尾ひれがついてどれが本当か分からなくなった学校の怪談がありましたが、それを確かめに行った当時の児童曰く、それぞれの死に方をしたであろう女の子がトイレの個室に何人も詰まっていた、という話があります。そうですね、考えないことです。お化けなんてないさ、お化けなんてウソさというのがいいかもしれませんね。あとは死者には安らぎを祈り、不法侵入をしない、品行方正でありましょう。


最後に他の話で言い忘れましたが、友人達は自分の足元が途端に気になったり何かに驚くようになったそうです。そして暗い玄関に怯えるようにもなったそうです。家を出て帰ると1番最初の暗闇は玄関ですからね。何かが倒れていたり気配を感じるから電気は付けっぱなしだそうです。それはそうと今自分達がいる場所も過去に何があって何を踏みつけにしているかって分からないですよね。知らないで酷い目にあったら理不尽です。


本当に最後に、友人達に教えた後輩さんはどんな流れでその家について教えてどこまでのことを知っていていたんでしょうね。

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