じいちゃん

@kaperu

第1話

2024年2月18日10時15分

祖父が死んだ。

93歳の誕生日を迎えてから二週間。

私が32歳の時だった。


第一報は私が会社でデスクワーク中、母からのラインだった。


『病院から至急来てくださいと電話があった。祖母とタクシーで向かう。』


私は『やばいのか?』と返した。


『みたいだ。』


私は『わかった。また状況がわかり次第連絡くれ。』と返す。


『了解』


それから30分後、母から再びラインが来た。


『先生はまだ来ないが死んでる😢』

『また、連絡する。』


その二行をみた時私は目の前が真っ暗になる感覚に陥った。

息ができなくなりそうだった。

声にならない声が出ていたかもしれない。

私は32歳にして、初めて家族を失ったのだ。

何よりラインから伝わる母の感情。

それが一番辛かった。



祖父が88歳の時、酒の飲み過ぎにより膵炎で緊急入院した際、たまたま胃癌が見つかった。ステージ2だった。

高齢の為進行が遅い事、手術をしても耐えられない可能性がある事を踏まえ、祖母と母の意向で延命治療はしない事になった。延命処置を取らないことに反対だったが、孫である私は二人の意思を尊重することにした。


それから五年後の事だった。


五年間ほぼ苦しむ事なく生きることが出来た。


今思えば延命処置を取らないことは正解だったと感じている。胃を全摘する事による食事制限、もしくは抗がん剤の副作用に苦しむ事もなかった。

何度か入退院を繰り返したがほとんどの期間は自宅で家族と過ごす事が出来たのだ。




ここからは私と家族との軌跡を少しだけ辿っていきたいと思う。特筆するような事はなく、極一般的な家族話だ。それでも良ければ付き合って頂きたい。

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