ホルスタイン女子高生とパンツの色 KAC20247

愛田 猛

ホルスタイン女子高生とパンツの色  KAC20247


その日。

本来なら休みのはずの魔法学園は、生徒だけでなく、色々な連中も集まって、ごった返していた。

この日は、一年に一度のオープンキャンパスなのだ。


入学希望者が来て、学校の内部を見ることができる。

当日は特別授業もあって、授業参観もできるのだ。


オープンキャンパスでは、保護者だけなく、卒業生も、学校の現状を見るためにやってくる。


誰でもが学校を見られる。これがオープンキャンパスの特色なのだ。


その日、ヤギ先生による魔法理論の授業が行われていた。


「…このように、魔力や魔法には色がある。みなさんも、自分が一番得意な魔法が何色なのかを、把握しておきなさい。」

ヤギ先生が講義をしている。


「じゃあここで、せっかくだから、授業参観している卒業生のかたにも、お話を伺おう。では、西さん、お話をお願いします。」


そういうとヤギ先生は、一人の人族に声をかけた。

軍人あるいは軍人あがりなのか、目を隠した兜をかぶり、軍服のようなスーツを着ている。


彼は教壇に立ち、皆に向かって挨拶する。


「ご紹介にあずかりました、西です。」

彼はそう言って、黒板に字を書いた。


『西大佐』


「にし:だいすけです。多くの人はシャアたいさ、と呼びます。みなさんは好きに呼んでください。」


皆、顔を見合わせる。


「人族は、魔力の発動が遅いんだよな…」

ケンタウロスのケンタが、馬鹿にしたように言う。


次の瞬間、ケンタの目の前に、真っ赤な火の槍が突き刺さった。

ケンタはまったく反応できず、目を白黒させている。


「人族の魔力の発動が遅いというのは、単なる無知と偏見だ。」


ケンタは顔を引きつらせて謝る。

「シャア大佐、ごめんなさい。僕が悪かったです。」


シャアの口元は、笑っている。目は隠れているのでよくわからない。


「君たちは、まだ世の中を知らないのだ。坊やだからさ。」


ザトウクジラのザクが、シャアに尋ねる。

「何か、魔法発動に秘訣はありますか?」


シャアは答える。

「先ほどのヤギ先生の授業でもあったように、魔力には色があるんだ。自分の得意な魔法の色を身に着けることによって、魔法の発動が迅速になったり、強力になったりする。覚えておくといい。」


「シャア大佐の魔力は何色ですか?」グレイウルフのグフが尋ねる。


「私の魔力は赤い。」シャアが言う。


「赤い服は着ていないように見えますが、どうなっているんですか?」ドラキュラムササビのドムが聞く。


「実は私は、赤いパンツを履いている。直接肌に触れるパンツを、魔力の色にすることは、君たちにもお勧めだよ。私は、ほかの連中より三倍速い。」


シャアはそういって笑う。そこで授業が終わりになった。何が速いのかは、結局誰も突っ込まなかった。


授業が終わっても、皆は興奮さめやらない感じだった。

ケンタウロスのケンタが言う。


「俺の魔力の色は茶色だ。茶色パンツを履いて、突っ走ろう。白馬節会ってのもあるから、青でもいいな。あ、ペガちゃん、パンツ何色?」


ケンタの憧れの相手、ペガサスの美少女、ペガに向かってそんなことを聞く。


当然のように頬を引っぱたかれ、ケンタはうずくまる。


一方、授業を聞いていた人族、安室礼二は。やはり興奮していた。

彼は入学前の14歳、厨二病まっさかり、かつ性欲まっさかりである。


(そうか。僕の白いブリーフは、僕の魔力を増幅してくれるんだ。このまま女の子たちをなぎ倒して、『白いやつ』とか『白い悪魔』とか呼ばれるくらい頑張ろう。僕の白いブリーフを見れば、フラーもセイナさんもきっと…」


単なる妄想である。実行したら即警察のごやっかいであろう。


ザトウクジラのザクが言う。「僕の魔力は、深海のような緑だ。緑のパンツを履こう。」

グレイウルフのグフも言う。「僕は当然、グレーだね。」


ドラキュラムササビのドムが言う。「僕は緑でもいいけど、この際やっぱり紫がいいな。リック、お前はどうだ?」


ドムの親戚、リクドラキュラムササビのリック・ドムは「うーん。茶色か紺色くらいがいいかもね。」


向こうでは、ゴッタルドクロコダイルのゴックと、ズームゴッタルドクロコダイルのズゴックが、何やら盛り上がっている。



学食カフェテリアに、ホルスタイン女子高生のホル美と、ミノタウロス女子高生のミノ子が座っている。

ホル美はミルク、ミノ子は紅茶を飲んでいる。


「みんな、盛り上がってるわね。」ミノ子がホル美の大きな胸を見つめながら言う。


(あんたの胸も、相変わらず盛り上がってるけどね。)内心そう思っているが、それは口には出さないのが彼女の矜持である。


「そ~だね~。」ホル美はのんびりと言う。

「私のパンツは、セーラー服と同じ、ホルスタイン柄の白黒なんだよね。」


(知ってるわよ、風が吹くたびに見えてるもの。)ミノ子は内心突っ込む。


「私の乳魔法は白だから、真っ白いパンツのほうがいいのかな~~。」


「ホル美は、今のままでいいのよ。それが一番ホル美らしいんだから。」ミノ子は言う。


(ホル美。あなたは伝説の聖牛だけど、あなたの極大乳魔法は虹色でしょう。でも、そんなカラフルなパンツは必要ないしね。というか、あんな極大乳魔法、年中ぶっぱなされたら周りはたまらないわ。)


ミノ子は思う。


「ミノ子は茶色よね。」ホル美が言う。

ミノ子はいつも肌の色と同じ、茶色い服を着ているし、彼女の魔法は身体強化が中心なので、肌の色と同じ色の魔力を使っているのだ。


「ええ、そうよ。」ミノ子はそう言って、笑う。


ペガサスのペガがやってきた。

「もう、ケンタの馬鹿。言えるわけないじゃない!」ペガはまだ怒っている。


「まあまあ。馬鹿は放っておきましょう。でも、ペガちゃんは、これからは光魔法を強めるのに、金色のパンツを履いたほうがいいかもね。」ミノ子が言う。


「スカートの中が光っちゃいそうだけどね。」ペガがそう言って笑い、帰っていった。


ホル美が、エイのオルテガを見つけて声をかける。

「オルテガくーん、仲間はどうしたの?」


「「俺たちのことかい?」」

よく見ると、オルテガの後ろに2人いた。

オルテガは言う。

「俺たちは黒い三連エイ! お揃いの黒いパンツでジェットストリームアタックをキメてやるぜ!」


「頑張ってね~でもそれだと、一人いないどダメダメそうね~」ホル美が本質をついてしまう。

オルテガたち三人は、何も言わずに去っていった。


ホル美は改めてミノ子を見たあと、半分飲んだ自分のミルクを、ミノ子が半分飲んだ紅茶に混ぜる。ホル美のアホ毛がぴくぴくと動いている。


「ねえミノ子。私たちが二人で何かするときは、薄茶色のミルクティーみたいになるんだね。これからも、二人で仲良く、ミルクティーみたいでいようね。」


ホル美はにっこり笑う。

思わずミノ子がどぎまぎする。


「あんたは時々そういう、天然ですごいこと言うんだから…。二人の魔力を合わせて薄い茶色にするのはいいけど、それで薄い本が出来たらどうするのよ…」


だが、その意味がホル美にはわからないようだ。

「薄い本? まあ、私は分厚い本を読み始めて3分で寝ちゃうからね…」


(まあ、こんなホル美が大好きなんだけどね。)ミノ子は黙って微笑む。


午後の日差しが、二人を包む。


「あ、コイキングさん!あなたは何色のパンツなの~」

無邪気にホル美が聞く。


コイキングは、きっぱりと答える。





























「コイは、履かない。」


魔法学園は今日も平和だった。


(完)





===

いろんな色が出てきましたね。

まあ、「色」というタイトルでは正統派のお話です(ホントか?)。


タイトルも釣りじゃなくって、本当にパンツ大行進でしたしね(笑)。


『白馬節会ってのもあるから、青でもいいな。』とケンタくんは言いました。

お分かりでしょうか?


何か、ちょっと牛百合(そんなものはない)っぽくなりました。



お読みいただき、ありがとうございました。

少しでも気に入ってくださったら、★、ハート、感想、フォロー、レビューなどお願いします。


特に短編の場合、大体が一期一会です。


袖すりあうも他生の縁。

情けは人のためならず。


あなたのほんのちょっとのクリックが、多くの人を幸せにするのです。

…もちろん私が最初に幸せになるんですけどね(笑)。



























…金のパンツって、股ずれして痛そう…

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

ホルスタイン女子高生とパンツの色 KAC20247 愛田 猛 @takaida1

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ