世界に色がついたのは大体平成くらい【KAC20247】
長多 良
世界に色がついたのは大体平成くらい
小さい頃。
大体幼稚園くらいの時だと思うが。
テレビで昔の映像が白黒なのを見て、
「昔は本当に白黒の世界だった」
と勘違いしていた。
まあ子供だから仕方ない。
テレビは現実の映像が流れていると思っていたし、
白黒テレビという概念も知らなかった。
とにかく、昔の映像とか写真とか、どれもこれも白黒なので、
人も動物も、海も空も花も、昔は白黒なのだと思っていた。
昔と言っても、自動車や飛行機が飛んでるくらいの時代でも
白黒の映像はあった。
それがどれくらい昔かは理解していなかったが、
「今は平成という時代で、その前は昭和とかいう時代だった」
という知識はあったので、
「大体平成くらいから世界に色がついたのかな?」
と勝手に思っていた。
ちなみに、時代劇などに色がついていることを
どう解釈していたかは覚えていない。
子供ながらに「劇」だと理解していたのだろうか・・・?
そんな私も大きくなるにつれて、
それが勘違いであることに気づいていった。
何で気づいたかは覚えていない。
誰かに言われたわけではなかったと思う。
多分自分でなんとなく
「あ、ちがうな」
と思ったのだろう。
先日小さい子供がその親に
「江戸時代って、世界は白黒だったの?」
と聞いていた。
今まで自分以外の人にこの話をしたことが無かったので、
(多分、恥ずかしかったのだと思う)
自分だけの勘違いかと思っていたが、
自分と同じような子供がいたことにちょっと安心して、
そして微笑ましくなった。
その子も大きくなれば、
最初から色とりどりの世界だったということに気づくだろうが、
「世界が白黒だったかも」という感性も素敵なものだと思うので、
その感性を大事にしてほしいと思う。
◆
時はさかのぼり、大体昭和から平成になるあたりの時代。
「ふぅ、この星に色を塗っていくプロジェクトもようやく完了ですね」
「なかなか大変だったな。我々がこの星に来た時は全部白黒だったからな」
「あの白黒星から、こんなにカラフルな星にして、
ようやく観光地として宇宙中からインバウンド客を呼び込めそうですね」
青い地球を見下ろしながら、宇宙船の中の作業員は満足そうだ。
「原住民の記憶改ざんも万全だろうな?」
「ご心配ありません。完璧です。
それに、敢えて昔の映像を白黒で残すことで、
『昔は白黒だった気がする?』
と思っても、
『いや、あれは映像の中だけか』
と脳内保管してくれるセーフティーを設けてあります」
了
世界に色がついたのは大体平成くらい【KAC20247】 長多 良 @nishimiyano
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