モノクロ★双子蜂ベル獲りシューティング ~想い出のゲーム~

弥生ちえ

モノクロ★ツイ〇ビー

 わたし自身が思うには、これは黒歴史でもなんでもなく、ただ幼い頃の良い想い出だったりするのだけれど……


 どうにも家族判定では黒歴史らしい。





 もともとわたしは、そんなに物欲の有る方じゃなかった。お気に入りと言うより、何となくヘビロテで着ていた上着は、黄色地に黒の二本線が肩から腕に入っているジャージで、濃いめのピンクのフレアスカートや、デニム地のスカートを合ってはいないが合わせて履いていた気がする。デザインどころか色合いにも無頓着だった。


 遊びも、春は農道に横たわり、田んぼに向かって紙コップや、おもちゃの小さなフライパンを手に思い切り腕を伸ばし、日がな一日おたまじゃくしをすくい続けた。親からは「おたま」と呼ばれていた。

 秋は同じ田んぼでコオロギをひたすら捕まえ、冬は雪の積もった田んぼで、部屋のようなもの(四角く踏み固めた空間に、ベッドや椅子など大きめの固まり)を作って遊んでいた。


 物欲の無さ&素朴な遊びばかりしていたわたしだったが、そんなある日、友人から革命的な遊びを知らされた。もたらされた。



 ファミリーなコンピュータだ。



 友人宅で初遭遇したその遊びは、音と動きが操作に連動し、可愛いキャラクターが思い通りに動いてくれない、けれど素朴な子供心を掴むには十分すぎるほど魅力的な物だった。


 そして、我が家にもその小さなゲーム機はやって来た!!

 最初のうちは、家族全員が物珍しいゲーム機に興味津々で、親子で楽しむこともあった。居間の家族全員が見るカラーテレビにはゲーム機が接続され、あっという間に家庭の中心的位置に上り詰めた――はずだった。


 だが、ゲームは遊ぶものであって、延々見続けて楽しいものではない。


 一日中、黙々とおたまじゃくしを救い続ける根気強さの持ち主――そんなわたしが夢中になって遊びまくった。そのせいもあり、家族は早々にゲームに飽き、テレビ番組が見られないとクレームが入るようになった。次第にゲーム機は家の中で市民権を失って行った。


 その時代、児童と呼ばれる者にマイテレビなどあるはずもない。小学生の居る家庭にカラーテレビが複数台なんて、そうそう無かったと思う。だから、肩身を狭くしながらも、ゲームをちまちまと続けていた。


 そんなある日、なんと親がゲーム用にと、一台のテレビを持ってきてくれたのだ!!


 画面は横が30センチくらいの小さなものだった。居間のものよりすっと小さかったが、気兼ねなく使えるマイテレビなのだ。充分すぎる贅沢な環境に感謝した。RFスイッチにテレビの背面に繋がる銅線を引っ掛け、接続。四角いゴムボタンを押してゲームを始める。


 無事ゲームは始められた! 音質にも、画質にも問題なし。


 家族が観るテレビ番組も邪魔することなく、気兼ねなくプレイできるテレビを手に入れたのだ!! わたしはハマっていたゲームを存分に楽しんだ。いつもより若干見難いのも許容範囲だ。遊べることが重要だった。だが、微妙に難易度が上がった気もした。けれど、やっぱり遊べるのだから・と楽しんでいた。


 一番難しかったのは「双子蜂ベル獲りシューティング」。愛らしいピンクや水色のミサイル機が、撃った回数に応じて色を変えるベルでパワーアップしながら、お皿やカエルやハエの様な敵を撃ち落として進むあれ・・だ。


 わたしのゲーム用テレビでは、「黄色」と「白色」「水色」が若干見分けにくかった。よく見れば微妙に色味が違うから、やっているうちに慣れて、そのうち問題なく遊べるようになったのだが――



 そのテレビは、白黒テレビだったのだ。



 遊びに来た友人は、若干驚いていた気もする。家族は黒歴史扱いもする。だがあれは、わたしの貴重なマイ・ゲーム用テレビだ。


 お笑いのネタで「白黒テレビでツ●ンビー」などと無理ゲーの代表格の様に言っているものを見たことがあるが、出来ないことは無いのだ。だってここに、それで遊んでいたわたしが居るのだから。


 やっぱりこれは、黒歴史なんかじゃなく、良い想い出なんだと思う。





 次に部屋に置いた2代目マイテレビが、5インチ画面の車載白黒テレビだったのもまた、良い想い出だ……。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

モノクロ★双子蜂ベル獲りシューティング ~想い出のゲーム~ 弥生ちえ @YayoiChie

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ

参加中のコンテスト・自主企画