羽休め パート5

!~よたみてい書

第1話

 今日は週末ということで、桃郷とうきょうから南西に大きく外れた場所にいる。

仕事の疲れを癒そうと思い、温泉で体を労わることにした。


 浴槽は30人が入れるほどの広さ。

私以外に入浴している人はご年配の方が二人だけ。

彼女たちは知り合いなのか、二人で談話しながらゆったりと湯につかっている。

そんな余裕がある状態なので、私が足と羽を伸ばしてもだれにも迷惑はかからない。


 はぁ、あったかい。

癒される。

体がぽかぽか。

脚もちょっと広げてしまおう。

はしたないけど、見られても困ることはない。


 一応、大きなガラス窓の外に視線を向ける。

遠くに緑色の山々がそびえたっていて、穏やかな風景が目に入ってきた。

風呂上がりにあの上空でおもいっきり飛んでみたら気持ちよさそうだ。




 風呂から上がり、脱衣所に移動した。

脱衣所には大きな鏡が壁際に設置されていて、同時に5人が自分の化粧直しが出来そうだ。

今は誰も利用していない。


 私は鏡の前に近寄り、自分の体をまじまじと見つめる。

自分の羽は水分を吸ってしまい、しなびた羽になっていた。

あまり魅力的な両翼には見えない。


 更に視線を自分の体の中心部に移動させる。

目立たなくもないけど、目立つ要素が見当たらない膨らみが2つ並んであった。

鏡に映っているバデュームの表情はどこか固い笑みを作っている気がする。


 私は2つのふくらみをそれぞれ両手で下部から持ち上げ、中央に寄せるようにしてみた。

柔らかい桃が2つ、私の体に出来上がった。




 温泉の浴槽から見かけた山の上の空を移動するのは予想通り気持ちが良かった。

周囲には何もなく、自由に移動できる。

私を束縛するものは何もない。

風が気持ちいい。

両翼が風をうまく捌いている。


 お風呂上がりの散歩を楽しんでいると、突然上空から声が聞こえてきた。


「お姉さん、なにしてるんですか?」


 一瞬体が跳ね上がり、すぐに顔を上に向けて状況を確認する。

そこに男性が居た。

といっても、普通の男性ではない。

なぜならここは空の上なのだから。

そして彼の背中にも、左右に翼が伸びている。 

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