はるかなるロケットおっぱい

じこったねこばす

はるかなるロケットおっぱい

厨二な俺はエロい話に目がない。


仕事しながら聞いているサブスク音楽アプリから、くるりの「すけべな女の子」という曲が流れてきて突如として思い出した。

銀行時代のオレの同期で、旧帝大卒の才女。


豊満な胸元が主張しすぎていたので「ロケットおっぱい」とのコードネームで呼ばれた総合職女性のお話。


彼女は入行式が終了して間も無く、すぐに研修所で同期からの注目を集めた。名を「はるか」とする。


はるかは、目が大きく鼻筋が通ったエキゾチックな顔立ちの女性で、何より目立つのは、「どこかでシャツのボタンが砕け散ったのですか?」っていうくらい開かれた胸元。

目を逸らすのに相当な葛藤を伴う。


ちなみに、彼女のシャツのボタンはたまたま吹っ飛んでいたのではなく、そこから研修所での研修が終了するまで何日経っても吹っ飛んだままだった。

研修の休み時間ともなれば、はるかの周りには、芳香に吸い寄せられた虫の如く、股間の先を濡らした同期の男たちが「ワンチャン」を目指して群がっていた。


オレだって三度の飯よりおっぱいが好き。

本当はジャングルの王者ターちゃんみたいに股間をstand&wetさせ、研修所に禍々しく咲き誇るラフレシア・トゥアンムデの周りを飛び回るだけでなく、その深い胸の谷間へ本能のままにDive To Blueしたかったが、サガミオリジナルくらい薄い自制心で自我を保った。


さすがにはるかは男慣れしていて、我慢汁を垂らして寄ってくるハエどもには全くなびかない。これには別の理由もあったことが後になってわかる。


桜が咲き誇る、のどかで温かな新卒の淡い色の春と、はるかの放つ淫靡で濃い雰囲気とのギャップは、オレの心に強烈なコントラストをもって印象づけられている。


導入研修中にオレがはるかと話すことは全くなかったが、その後の別の研修で偶然はるかと同じグループになり話す間柄になった。

対面の席に座りたかったが、そうすると彼女の胸元に自分の目線がボルト留めされてしまうので、いっそのことと思い横に座ることにした。

はるかは明るく饒舌でアツい奴だった。


休み時間にはるかと色々な話をした。

銀行に入ったのはステップの一つであること、いずれ経営者になりたいとか、将来は自分の名前で仕事をしたいという点など、割とオレと価値観が近いヤツで、見た目はエロいし艶っぽいが、心根は悪くないヤツなのだと思うようになったため、正直オレは彼女に悪い印象はない。


はるかは酒が好きでワインを愛飲した。

彼女は研修後の飲み会には必ず来たし、はるかをモノにしたい男どもは発情したクジャクのように汚え羽を精一杯広げる。

毎回飲み会はクソほど盛り上がった。

はるかも飲むとボディタッチが多くなる。入行して3ヶ月と経たないうちにはるかは同期の間で有名になった。


その後はるかは関西の店舗に、オレは都内に配属になったため、接点も徐々に無くなっていった。

集合研修がたまに開催されたが、はるかとオレは違うグループであったので、顔を合わせることもなかったし、特段生活の中で彼女のことを思い出すこともなかった。

再びはるかの話を耳にしたのは数年後だった。


入行から3年経ち、皆が初任店から二つ目の場所に異動し始めて暫くした頃、エリートのはるかは東京のまん真ん中の、これまた名門店舗に異動となった。

女性総合職の数がまだそれほど多くなかった時代、二場所目で本部が女性エリートの王道だったので、現場配属というのは同期の間でかなり話題になった。


ある日、衝撃的な事件が発生する。

通常、銀行では一つの部署に3年前後在籍するのが慣例である。

しかし、突如としてはるかが、名門支店への在籍1年そこそこで「事務センター」に異動するというショッキングな知らせが舞い込んできた。

何があったのか?

同期連中に問い合わせるも誰も何も知らない。


オレの中のリトル梨本勝がざわつく。

「何があったのか知りたい」。


そこで、はるかのいた支店の電話帳を開いてみると、独身寮時代の後輩がいることがわかった。

彼には以前飲みを奢ってやったほか、ド●モショップの肉食系お姉さんとの合コンに連れて行ったことがある。

早速仕事のふりをして後輩に内線をかける。


じ「久しぶり。じこばすです。」

後「あ!じこ兄さん、久しぶりです。」

じ「ちょっと君に聞きたいことがあるんだけど。」

後「はい!なんでしょう?」

じ「はるかのことなんだけど」

後「あ!は・・はる・うぐぉっ※#」


後輩は唐突に銀行の内線からはあまり聞いたことのないエイリアン音を出した。


じ「おい!どうした?」

後「いや、その話は・・ですね。いま席では、というか、席でなくても・・あの・・ですね」

と、しどろもどろ。


これは恐らく箝口令を敷かれているに違いないと確信するリアクションだった。


じ「わかった。お前にも立場がある。話さなくていい。YesかNoも言えないんだろ?」

後「はい。」


後輩はこれ以上オレから追及がこないと踏んで安堵しはじめた。

しかし、オレにとって、真実に辿り着くにはこいつが一番の近道であり、簡単に引き下がれない。


じ「長電話していても周囲に怪しまれる。今からオレがワードを出す。該当していれば『はい』、Noなら『いえ』と答えてくれ」


さながらオレの気分はもうジャック・梨本・バウアーだ。


じ「不正」

後「・・・いえ」

じ「心の病」

後「・・・いえ」

じ「上司とのトラブル」

後「・・・うっ。やはりここでは」


じ「おい。君は以前オレと行った合コンでド●モショップのお姉さんに気に入られ、先輩のオレらを置いて急にいなくなったことがあったな?」


後「うがっ・・」


じ「積極的なお姉さんだったよな。たしか、チューしはじめたら、向こうがかなりの手練で、鼻の穴の中まで舐められたらしいじゃないか?お前言ってたよな。『僕のピンコがバリ4でしたわ!その後、朝までカケ放題!』とかなんとか。それから・・」 


後「う、うわあ・・・は、はぃぃ」


そうして後輩は昔の話を持ち出され、箝口令の壁を飛び越えるセルゲイ・ブブカになった。


独身寮の先輩・後輩の絆は、山より高く、谷より深く、実話ナックルズより下世話だ。


じ「上司とのトラブル、、はるかのことだから、嫌われてイジメられて飛ばされた。ではないよな?」


じ「じゃあ、社内での不倫か?」

後「は、、はぃぃっ!じこさん、、し、、失礼しまぁす!・・(ガチャ)」

後輩は芸人のやす子みたいな「はいい」との返事の余韻を残し突然電話を切った。


まだまだ聞きたいことがあったが、十分な情報を聞き出すことができた。

そこで、はるかがいた支店の異動情報を見た。


そこに気になる異動があった。

不倫だとすれば相手の男はどうなったのか?


はるかが異動したその日にもう2人の異動があった。


1人は「本店営業第●部 調査役」

はるかのいた名門支店からであれば順調な出世といえよう。

コイツじゃない。


もう1人は「○○支店 支店長代理」

・・・コイツか?


この男の過去の異動情報を見てみる。

すると、この男。はるかのいた支店には2年ちょっと前に着任している。

これまでのキャリアもそこそこ綺麗だ。


順調に行けば、次はどこぞの課長になってもおかしくない年次であるのに、今回の異動ではクソ微妙な支店への「支店長代理」で横スライド。

まちがいない、相手はコイツだ!


その後の調べで本件について色々なことが分かった。

はるかは着任して間も無く、10コ以上歳上の同じ課の筆頭プレイヤー山田と「良い仲」になる。山田は既婚。


2人の逢瀬は業務終了後に留まらず、なんと主に業務中に行われていた。

本件の告発者は、山田の挙動を怪しんだ山田の妻からだったそうだ。


「職業倫理規定違反」。


これが主な彼らに対する処分理由となったが、ここで疑問が湧く。

何故、男サイドが現場への異動で、女性サイドが「事務センター」なのか?ということ。


はるかが「事務センター」なら、男サイドも同様に「関連子会社」や「本部にあるどこか」にならないと処罰として釣り合わない気がした。


そんな疑問を抱いても誰も答えてくれるはずもなく、本件は同期の間にかなりのインパクトを残して、人の噂も75日という言葉と同様に徐々に日々の喧騒に償却されていった。


そこから何年かして、たまたま業務で仲良くなったはるかの元上司と飲みに行った際に話が聞けた。

聞いた話はオレにとってはかなり意外な話だった。


はるかの元上司は語る。


「あの事件はな、調べてみると山田側がけしかけた事件ということでは無かったんだよ。勿論、不倫だから両者に責はあるのだが、主には女性からの誘いに、バカな男が乗ったという話なんだ。奥さんからのタレコミで人事部が調査して支店に乗り込んできた時、2人のメールのやり取りの写しを渡されたんだ」


「それを読んだ時、時代は変わったな。と思ったことが印象的だった。女さんサイドがとっても積極的なんだよな。『あなたが欲しい』『今からすぐ外で会いたい』『いつものホテルの前で待ってる』なんて終始こんな感じだったんだ。山田は真面目なやつで、見た目は正直パッとしないやつだから意外だった」


「どうやら、女性側本人に事実確認の際に人事から聞くと、『山田のような風体の妻子ある男に惹かれてしまう』との発言があって、異動先にはそういう『ちょうど良い』男性が少ない事務センターが選ばれたんだよ。酒の席だから言うと、あのメールはその辺の小説より生々しかったね。」

とのことだった。


世の中にはさまざまな趣味があるものだ。

そりゃ、同期のチンパンジーが群れをなして寄って来たところで見向きもしないわけだ。合点がいったし、ちょっと山田が羨ましくもあった。


しばらくの間、「処分はされても乳を揉んでる山田は勝ち組」という言葉がオレの頭を何度も反復横跳びしていた。クソが。


その後のはるかはある意味逞しかった。

なんと、事務センターでも上司を相手に同様の事件を引き起こすのだ。


センターの上司はもう50オーバーなはすだが、彼女のストライクゾーンはどうやらその辺にあるらしかった。

事務センターのおじさん達からすれば、これ以上左遷のされようもないし、無敵だ。


おじさん達からすれば、急に若い女性に言い寄られる。

春再び。

といった感じだろうか?


昔見た素人モノマネ王座決定戦で、大人のサザエさんを演じたレイパー佐藤師匠が放った「波平、蘇る青春」というパワーワードが脳髄の奥から呼び起こされる。

いまやはるかは銀行を去り、コンサルとして独立した。


時折、SNSから届く彼女の近況。

ゴルフも頑張っているようだ。

「今日は⚪︎⚪︎会の社長の皆さまがたとコンペです!頑張ります!」 と、おじさん達にはるかが紅一点囲まれたゴルフコンペの写真。


この胸のざわつきはなんだろう。


クーーーーッ!

なんだかオレ、今晩月に向かって吠えそうな気がする。


おしまい

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