その頬の色は。

奈那美

第1話

 遠藤君にバナナミルクを渡した。

うん、多分さりげなく渡せたと思う。

『昨日のお礼……と、言いたいところだけど』は、もしかしたら必要なかったかもしれない。

だけど、予防線として張っておくに越したことはないよね。

 

 「おはよ、里穂。どうしたの?朝っぱらから遠藤君になにかあげてたようだけど」

佳織が声をかけてきた。

「ほんと。珍しいことじゃない?里穂が遠藤君に話しかけるなんて。お礼って聞こえたけど?」

有紀も後に続く。

 

 「昨日さ、有紀と佳織それぞれ()一緒に帰るからって教室出ていったでしょ?」

「うん」

二人が返事する。

「私も帰ろうとしたら遠藤君が教室に戻ってきたの。で、そのタイミングで森口先生が教室に来てさ、倉庫.の片づけを手伝うことになったの」

 

 「災難~」

佳織が言った。

「仕方ないから手伝ってたら、木のささくれで指ケガして。そしたら遠藤君が絆創膏巻いてくれたの。あと駅までの帰り道、送ってもらった。真っ暗だったから」

「たったそれだけで?」

「ホント言うとお礼というのが口実。イチゴミルク買おうとしたら隣のボタン押してたの」

 「あぁ。イチゴミルクとバナナミルク隣同士だもんね。私もたまに間違いそうになる」

「私も」

 

 三人でクスクスと笑いあった。

「でも、里穂?もしかして遠藤君、バナナミルク苦手かもよ?お礼って言って渡して大丈夫?」

「多分……前に自販機で順番待ちしてた時に、買ってたの見かけたことあるし。だから買い間違えた時に一番最初に思いついたんだ。遠藤君に飲んでもらおうって」

 

 「ふうん」

有紀と佳織は納得したようなしないような顔をしている。

「それより、さ。二人とも昨日はどうだったの?一緒に帰ったんでしょ?」

二人は顔を赤くして顔を見合わせている。

もじもじするばかりで、なかなか口を開かない。

 

 ──チャイムが鳴った。

「あぁもう。時間切れじゃない。休み時間に聞かせてもらうからね。二人のほっぺがリンゴ色になっている理由わけ

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