モノクロームな世界の出来事

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一時的にモノクロに変わった世界

「先日、乳牛だと思いバッファローへ誤って近づき、突進され重症を負ったという事件が動物園ありました。専門家を呼んでいます……」

「えぇ、今世界各国で起きている地球バリア計画の弊害だと考えられます。太陽光が大幅に遮断され、……」


 朝7時。

 僕は2つのコップに注がれた白い液体達を見つめる。

 46インチの液晶薄型テレビに映る昭和の白黒映像のような画面の中で、専門家であろうおじさんとキャスターが何かを喋っている。

 でも、僕はそれどころじゃない。


「最近、いろいろ事件が多いみたいね。信号機の色も全部白く見えて交通事故が増えてるみたいだから気をつけなさいよ」


 シャーペンの黒線で描かれたような母造形の母がいつも通り食器を片付けながらテレビに便乗したように注目する。

 他にも白紙になった新聞紙を読んでる父に不機嫌そうなのが線画でもわかる姉。

 3色だったはずの茶色が黒に変わり、ホルスタイン柄に変わってしまった飼い猫のミケ。そして、同じく線画風に変わってしまった僕。

 そう、つい先月世界に色がなくなったってしまったのだ。



 僕達……この地球にいる人達は今、白黒の世界で生活をしている。



 理由は難しくて良くわからないけど……人類が滅亡を阻止する為、地球にバリアを貼ったら光が上手く届かなくなったんだってさ。

 最初は流石に僕も焦った。

 これこそ世界の滅亡だって僕達家族も覚悟を決めたよ。

 でも、人間って慣れるもので1ヶ月経つと以外となれる。

 今はまたこうして普通に生活しているのだけど、白黒でしか表現されなくなると私生活に影響出まくりなのだ。


「姉ちゃん。どっちが姉ちゃんのコップかわかる?」


 再び、僕は2つの白い液体が入ったコップを前にする。


「別にどっちでも良いでしょ。好きな方飲めば?」

「いや、姉ちゃん牛乳飲んでたでしょ! 僕、牛乳飲むとトイレ行きたくなるから朝は飲みたくないんだってば!」


 僕も今、この白黒世界の中で危機にひんしている。

 同じガラスのコップの中に姉の牛乳か、僕のオレンジジュースのどちらかが入っている。オレンジ色の色が抜かれ同じ白に変わってしまい、飲まないとわからないのだ。

 臭いも若干あるのだが、色がないとこうも自分の五感に自信が持てないのか想像すらしてなかった。

 姉は顔を歪める。


「うっさいな……アタシも学校の美術部の事で考えてるんだから話しかけないでよ」

「あれほど、隣にコップを置くないでって言ってたのにそれはないよ! どうするのさこの状況! 死活問題だよ!」

「ああああああうっさいなあ!」


 姉は1つのコップをがぶ飲みし、空のコップを台所へ置く。


「牛乳だった! ごちそうさま! こんな状況何だから学校休みになれば良いのに!」


 大きい声を出してドンドンと姉は自室へ戻っていく。僕の問題は無事解決し、残ったコップのオレンジジュースを飲む。



 この白黒になってしまった地球だが、僕もそうだが皆悲観はしていない。

 と言うのも、実来週ぐらいに地球に貼られたバリアは解除される。

 世界の危機は過ぎ去るらしい。

 そうなると、こんな珍しい状況を体感できた自分と言うのは結構ラッキーな世代に生きたのかもしれない。

 いつか、あの時は大変だったねと言い合え出来事になったら良いなと思う。


 ぼーっとしながら僕は飲み終え、急いでトイレへ駆け込んだ。

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