キミヲ造ル方程色
杜侍音
キミヲ造ル方程色
私はね、いわゆる共感覚というものを持ってるんだよ。
共感覚というのは情報を処理する際、無関係なものが感覚として認知されるのさ。
そうだね、有名なところで言うと文字や音に色が見える、とかかな。
──まぁ、私の場合はそれだけに収まらないのだけどね。
……全てが彩って見えたんだ。
人間が視認できる色はもちろん、文字や音、時間や感情など色を持たぬものからも、または色から感じ取れる色さえも、ね……もう疲れたよ、私は。
どんな綺麗で鮮やかな絵の具も混ぜるほどにぐちゃぐちゃになって黒くくすんでいく。
素直な世界を一度はこの目で見てみたかった……もう、叶いそうにはないけどね。
それに一番色濃く出るのが人の憎悪や嫉妬でね。それはもう不快極まりなかったよ。
これ以上何も見たくない。だから目を閉じることにするよ。
……もう時間がないか。
キミには私しか見えない世界を全て取り除いたつもりだ。
全てが情報とカラーコードで組まれた世界。
けれども、それが大多数が支持している真実なのさ。
本当のキミが何色なのか、私が感じ取ることはできない。
私の目には無色透明なキミが赤い世界に包まれている、くらい、しか分からないかな……。
……おや、お客さんが来たようだ。
じゃあ……ふふっ、元気で──
◇ ◇ ◇
そして、ワタシは目の前の世界を眺めていた。
これが赤……血の色。
どれだけ外を彩ろうとも、切ってしまえばニンゲンは全部同じ色をしている。
博士がこれらに殺されたのはワタシが関係している。
この世の全てを解決に導くのがワタシ。と、博士は初期開発段階では嬉しそうに語っていた。
ワタシには戦争をこの世から消すことができる力がある。
ただ、それをよく思わない人間は考えているよりもずっと多かった。
色々な思惑がぐちゃぐちゃに混ざりあい、博士は世界の色に沈んでしまった。
ワタシが、平和を望む博士が見れなかった世界を見て回り、感じること。
それが代わりに生まれたワタシの意義である。
キミヲ造ル方程色 杜侍音 @nekousagi
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