天弓
野村絽麻子
ボクと黒猫と雨の日
どうやら今日の
それはきっと、しとしと降り続く生憎の雨のお天気に、自慢の毛並みがしゅんとしているせい。ボクは取って置きの
「ほら、ご覧。まるで世界中の色を閉じ込めたみたいな鉱石だ」
ミネラルを含んだ
冬の空みたいに透き通る
どれもキャンディみたいな正八面体。手のひらに乗せるところりと可愛らしく転がる。窓の外が雨模様なことも忘れて、ボクは夢中で魅入ってしまう。なんて素敵な鉱石だろう。
「ねぇ、オペラ」
振り返ると、丸くした背中が見える。面倒そうにパタリと尻尾を動かしている時は。ははぁん、さてはこの黒猫ってば、どうやら完全に拗ねている。
「オペラの毛並みはなんて美しい黒なんだろうねぇ」
ボクは叔父さん譲りの口調でもって、やんわりと黒猫に呼びかける。さらさらの手触り。温かな体温。
「ほら、こうして見ると光を弾いて、綺麗な虹色の艶が見えるじゃない?」
「本当に、綺麗……」
思わず魅入ると、黒猫は照れ臭そうに耳を掻き、それから、窓の外へと視線を向かわせる。
「おや。雨が止んだかしら」
窓を開けてボクは、わぁ、と思わず叫んでしまう。だって、それはそれは大きくて立派な虹の橋が、ボクらの頭上を悠々と横切っていたのだから。
「散歩に行こう!」
嬉しさのあまりソファから跳ね起きると、わくわくと瞳を輝かせた黒猫がニャアンと機嫌良く応えた。
天弓 野村絽麻子 @an_and_coffee
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
同じコレクションの次の小説
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます