【KAC20246】うっさい、ブタ野郎。

マクスウェルの仔猫

第1話 とりあえず


「とりあえず……どうしようかな。カプチーノ、いや寝不足だからたまにはエスプレッソでも……何かカッコいいけど私には似合わない気がする……朝ごはんも食べたいし。ふむー」


 小説投稿サイトの締め切りに追われてて、寝不足が続いている。何とか今回も投稿できたけんども、鬼のように続く締め切りラッシュ、仕事はバタバタ……果たして私は投稿を続ける事ができるのだろうか。


「私は決まった。ほら、早く」


 あう。


 今決める。

 もう決まるから!


「早く早く……」

「わかった、わかったぁ! とりあえず……ううう。寝不足だから頭が回んないよー」

「それは寝不足のせいじゃない。さやかが持って生まれたどんくささと、ゆるふわお花畑頭のせい」

「ひどいこと言うよな!」


 そこの美少女の皮を纏ったジト目な人、ごめんちょっと待って。るる、ツッコミがハンパないからなあ。黒髪サラサラで切れ長の涼しげな瞳、整った顔立ちから繰り出される……あれ?


 ツッコミじゃなくって本気で言ってたりはしないよね?


 とはいえ、これは自分がいけない。小説投稿サイトに書いてるのは自分の好きでやってる事。それをるるにどうこう言って理解してもらおうと、気遣ってもらおうとするのは違うからだ。


「ごめんごめん、ちょっと待って! すぐ決める! 決める! えっと、とりあえず……とりあえずぅ……」


 後ろを振り返る。


 まだ誰も並んでないけど、外の看板を眺めてるビジネスマンが何人かいるから列ができそう。


 お洒落で私達の大好きなカフェは電源も完備してるし仕事にもうってつけの場所だし、ここ喫煙スペースもあるしなあ。


 しまった。そんな事を考えてる場合じゃない!


 るるのジト目が刺さる。ヤバい。

 指でほっぺたグリグリしないでえ!


 早く決めないと……あ!


「るる、先に買っていいよ! とりあえず私は席でオーダーするよ!」


 名案!

 ここ、スマホでオーダーできるんだった!


「……とりとりうっさい、このブタ野郎」

「生まれて初めて言われた……」

 

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