【黒歴史】卒業式を台無しにした話

麻木香豆

🎓

 ※今から20数年前の話です※


 小学校6年生、初めての卒業式。5年生の時に卒業式に参加して上級生の卒業式の呼びかけ(いわゆる「たのしかった、修学旅行ー」とか思い出話を卒業生が一言一言言っていくやつ)や合唱を見てすごいなー、来年あんなのやるんだーと特に知ってる人がいたわけでもないけど感動してました。子供ながらに。


 しかし実際6年生になり、年明けごろから……時期は覚えてないけど毎日のように呼びかけのどこを読むか立候補や合唱の練習が始まるのです。

 ※ちなみに修学旅行先でもどこかのホールで合唱するほどです。特に全国大会出たわけではないのですが。


 我が校は毎朝夕必ず合唱は決まりでしたので歌うことは苦ではなかったけど卒業式の合唱となるとかなりの厳しさで全体に悪いともちろんですがどこかのパートが小さいとさらにそこが厳しく追求されてそこをネチネチ言うヒステリックな女性教師。

 男子の一部がやはりやる気無くしてる人が多いのかそれでもやり直し! 小さい! の罵声。

 きびしー、疲れるわーと。


 合唱がこんな感じなので卒業生の呼びかけも厳しいわけで。今はどうか知りませんけど。

 声が小さかったり何言ってるかわからなかったり忘れたりすると注意を受けます。

 わたしは当時どもりがありましたが言葉のチョイスも奇跡的に良かったのか注意されることはなかった。


「起立! 礼! 着席!」

 先生の罵声に近い号令で何度も何度も立って礼して座る。少しでもタイミングが合わないとやり直し。

 ひどいと教室からやり直しもあった。


 こうして入退場、礼のタイミングも厳しく揃えられギリギリまで練習。

 なんでここまでするのだろう。親に完璧な姿を見せて感動させる? 裏側にこんなにスパルタなことがあったなんて知るよしもがな。

 ここは軍隊か? と思いながら当日を迎えた。


 この厳しい練習があったおかげでそつなく先は進んでいく。

 私たち卒業生以外に下級生、多くの先生、見たことのない来賓の人たち、そして親。

 練習の時にいなかった人たち、厳かな雰囲気にさらに緊張感は増す。


 ステージに並び卒業式の呼びかけも声が裏返ったりフライングで泣いて詰まる子もいた。私は緊張しつつも何とか自分の番を無事に終えてホッとした。

 そして合唱。三曲も歌う、もうみんな涙涙。卒業することで泣いているのか、厳しい練習を思い浮かべたのか、無事に終えたからなのかみんな大号泣。

 親たちも泣いている。


 そして合唱を終えて席に戻り座る。


 これで式は終わる。私もホッとした。


 そして最後、学級主任が涙しながら最後の号令。

「全員起立!」

 揃って立つ。


「礼!」

 揃って頭を下げる。


 そして私は着席した、いつものように。隣の男子も。


 しかし……



 誰も座らない。


 いや

「着席」

 の号令もない……。

 え? なんで? 

 起立、礼のあとは着席のはずじゃ……?


 あ、そうか。卒業生はそのまま退場だった……。なんたること。


 私と隣の男子は固まる。そこに冷たい視線。

 しかも私たちの後ろすぐは親たちの席。そこから失笑……。


 今までの練習、そして感動の卒業式を一瞬で台無しにしてしまったのであった……。


 終


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【黒歴史】卒業式を台無しにした話 麻木香豆 @hacchi3dayo

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