言葉は生きている

水乃流

とりあえず

 お題は「トリあえず」。「トリ」をカタカナにしているあたりが、出題者のいやらしさというか、狙ってるな感が出ている気がしますね。トリに引っかけているのでしょうがね、「鳥会えず」とか。

 それはさておき、とりあえず(取り敢えず)といえば思い出すのは、ガンダムに登場する航空機「トリアーエズ」ですね。いや、この航空機、1stガンダムには登場していないんですよ。でも、ガンダムのSLGには登場すると。そりゃ、ゲームと言ってもいきなりモビルスーツが生産できちゃったらゲームバランスもなにもあったもんじゃないですからねぇ。それはわかるんですが、それにしても「とりあえず」って最初に見たときには「ひどいな」と思いましたよ。とりあえずって。

 「とりあえず」といえば、「ひとまず」とか「さしあたって」のような、時間がないから急ぎ用意しましたみたいな意味で使われていますね。深いことは考えず、その場限り行き当たりばったり。どちらかといえば、ネガティブな印象のある言葉ですね。しかし、昔は他の物事は置いておき行動する、といった意味で使われていたようです。「とりあえず(目の前のことは放っておいても)」といったことなのでしょう。現代でも「取るものもとりあえず」という言葉が残っています。準備万端な状況ではないけれど行動する、ということになるでしょうか。

 どうして意味合いが変わっていったのでしょう? 「とりあえず」という文字面が、少し軽かった空なのかもしれません。

 このように、言葉というものは言葉が持つ意味が変化する場合や、言葉自体が変化する――たとえば、「とりあえず、まぁ」が「とりま」(もう古い?)になるような場合など、まるで生き物が環境に合わせて進化していくように変化します。それは自然のことなのでしょう。ですから、「この言葉の正しい意味はこうだ!」とか押しつけるのは、意味のないことなのかもしれません。それでも……まぁ、とりあえずこのくらいにしておきましょう。

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