トリあえずとキノタロウ

キロール

キノコのキノタロウ

 ここはキノコたちが住んでいるキノコの町。


 今日も百円ショップで三百円くらいで売られていたキノコのぬいぐるみに手足が生えた様なキノコたちが楽しく暮らしていました。


 そんな町の一角、二階建ての木造アパートの二階部分に住んでいるキノコのキノタロウの内に友人のオニフスベが遊びに来ました。


 オニフスベは白くて丸いキノコでのんびり屋さんのUMA好き。


 今日もキノタロウに何か相談しにやってきました。


「ねぇねぇ、キノタロウ」


 とオニフスベが言いました。


「なぁに、オニフスベ?」

「トリ、見に行こうよー」


 キノタロウがいつも通りに聞き返すと、オニフスベはいつものように丸い身体をゴロゴロさせながら間延びした声で言いました。


「鳥? その辺に飛んでる鳥?」


 キノタロウははてなと首……キノコの笠らへんを傾げながら訝しげに聞くと、オニフスベはフルフルと揺れながら答えました。


「違うよ! 鹿渡河かどかわ県に住んでいる伝説のUMAだよ」


 UMA大好きなオニフスベはうっとりと言いますが、キノタロウはある種の危険性を感じてしまいました。


「……なに、その帝都物語に出てきて遷都とか率先して行いそうなキャラ名している県は……」

「アレはちゃんと占いで名前をカクカワに改めてたじゃんー」


 などとディープな話に脱線しかけた所で、オニフスベが我に返って言いました。


「とりあえず、行こうよー」

「ええー。まあ、良いけど」


 という訳でキノタロウとオニフスベは車に乗って鹿渡河かどかわ県に向かいました。


 鹿渡河かどかわ県は高速道路に乗って三時間ばかりのところにありました。


 道中のSAで鶏肉とゴマミソの和え物を食べたり、鶏肉と梅肉を和えなかったりしてご飯を食べました。


 鶏和えず、なんちゃって。(苦笑いの後、ナレーターは真顔になって台パンした)


 そんなこんなで鹿渡河かどかわ県にたどり着きました、時刻はもう夕方です。


「うーん、トリが何処にいるのか知らないけれど、とりあえず今日は探すの止めた方が良いよ」

「じゃあ、郭世夢かくよむ旅館に行こう、予約してあるからー」


 また、ヤバい名前の旅館だなと思いながらキノタロウはオニフスベに運転を任せて外をのんびりと眺めていました。


 日が山間に沈んでいく風景はちょっと地方に行けば今はまだどこでも見える風景です。


 ですが、この先いつまでこんな風景を見ていられるのか……キノタロウは不意にそんな事を思いました。


 未来に対するそこはかとない不安を覚えた時、夕日を横切るように飛んでいく影をキノタロウは認めます。


 フクロウめいたその影は、何故か頭にパーティー用の三角帽子を乗っけていました。


 誕生日、だからでしょうか。


 キノタロウは、アレがトリだったりして……などと思いながらいつまでも夕日を眺めていました。


※  ※


 結局、オニフスベはトリを見ることはできませんでした。


 それでも彼のUMA探求は終わることは無いでしょう。


 ちなみに……これが本当のトリあえず、なんちゃって!(言い終えてからナレーターは無言で台パンした)


<了>

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