トリあえず、デスゲームだ

水城みつは

トリあえず

「おのれ運営、煽ってきやがる!」

 スマホを開きお題を確認して声をあげた。


「桜先輩、なお先輩どうしたんですか? ソシャゲで何かありました?」

「あー、ソシャゲじゃないけど、いや、どうなんだろ、ねぇ直?」


「ん、小説投稿サイトという名のソシャゲだな。で、今回のデスゲームイベントのお題が『トリあえず』だったんだよ」


「『トリあえず』ですか?」

 紅葉もみじが首をかしげる。


「そう、『トリあえず』がお題なので何書こうがとりあえず書いたで良いとも言える。ただなあ、このお題『とりあえず』じゃなくて『トリあえず』と『トリ』だけわざわざカタカナにしてるんだ」


「いやいや紅葉、突っ込むところはそこじゃなくてデスゲームでしょ。小説投稿サイトのイベントでデスゲームって、なんなんですか?!」

 葉月はづきが紅葉の肩を掴んで声を荒げた。紅葉と葉月は双子の姉妹であり仲が良くて何よりだ。


「そうよ、直、小説投稿サイトでデスゲームイベントって莫迦なの?」

 桜が莫迦なのはお前だろうとばかりの目でこっちを見ている。

 流石にきちんと説明しないといけないだろう。


「今回のイベントはお題が八つ出るんだ。そして、お題をこなせなくなったものから脱落していくデスゲーム」

 この『トリあえず』は六つ目のお題となっている。


「作品数も徐々に減って千を切っている。つまり、皆勤賞の生き残りは千人未満だ」


「あー、それでデスゲームね。で、生き残るとどうなるわけ?」

 若干投げやりに桜が聞いてきた。


「トリグッズガチャだ! 全部で二百名分のトリグッズがもらえる。このままでも二十パーセントの確率であたる割の良いガチャだね」


「そういえば先輩ってイベントの度にトリグッズ、トリグッズ言ってましたね。当たった話は聞きませんけど……」

 紅葉がしまったというような顔をして目を逸らした。


「そう、未だ手に入っていないだよ。それなのに『トリ会えず』なんてお題を出しやがって!」

 おのれ運営……今回こそはお願いします。 









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