第6話 妖怪の友達
思えば、彼は何も悪いことはしていない。ただ話しかけられ自分の姿を見せたら叱られた。こんなに理不尽なことはない。
見守る三人はしばし沈黙、各々に行動、言動を少し反省した。
「女だと決めつけてしまって、変な期待をしてしまう僕たちにも反省するべきことはあるね」
「確かになぁ、マスクしてる奴って奇麗に見えるもんなぁ。男も女も」
「僕たちが勝手に想像をしてしまうんだよね。テレビか何かでやってたよ」
「悪かったな、こっちから話しかけて」
ダイキが謝罪の言葉を述べた。
「いや、いいんだよ。僕って昔からそんな感じだから、友達もいないし・・・。さっきもいろんな人に話しかけて脅かしてみれば、自信がつくかと思ってうろうろしてたんだ。口裂け女の伝説通りにうまくできれば何か変わるんじゃないかと思って」
彼は自傷気味に力なくカラカラと笑った。
「でもダメなんだ。僕人見知りで、人に話しかけられないんだ。友達もいないし。そんな自分が嫌で、化粧を始めて、すごい楽しいって思えて・・・だけど、どんなに上手く化粧ができたと思って「キレイ?」って訊いても、無視されて変人扱いだし、自分に自信がつかないんだ」
口裂け男は下を向く。
また一滴の涙が、零れた。
「お前なぁ、他人からキレイだとか、キレイじゃないだとか言われて、どうするんだよ。人からの評価で生活して、何が面白いんだって。他人に自分の外面の事訊きまくって、自分の評価するな。人の目なんて気にすんな!」
「!」
口裂け男がハッと顔を上げる。
「それに、大切なのは外見だけじゃないぜ。内面も大事にしないとな!」
ダイキは親指をビシッと立てた。
「それに、ここで会ったのも何かの縁だ。俺たちが友達になってやるよ! いいだろ?二人」
ダイキの言葉にヒカとゴローはうんうんと頷いた。
「妖怪の友達なんてなかなかできるもんじゃないしね」
「ありがとう。僕、頑張るよ。これからは他の人の意見に惑わされることなく、どんなに人に煙たがれても、自分の人生を自分らしく、生きる!」
口裂け男は空を見上げた。
その目には、全ての悩みを浮かべ、大粒の涙として外に流した。
その涙は今まで彼が流してきた涙とは全く別の涙だった。
「名前なんて言うんだよ?あるんだろ?」
「・・・ジョナ」
「ジョナ⁉ 日本名じゃないんだ」
「良い名前だね、これからよろしく」
ゴローとヒカルは笑った。
「よろしく!」
「歯医者行って治療しろよ! 人の眼は気にせんでも、友達の鼻は気にしろよ。健康
にも悪いからな!」
ダイキは無慈悲に告げた。
「えー! 歯医者苦手なんだよー!マスクしてる口裂けの一族が人前で口開けるって抵抗あるなぁ」
口裂け男ことはジョナ別の涙を流した。
シン・口裂け女~少年達、現代で口裂け女に出会う⁉〜 赤坂英二 @akasakaeiji_dada
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