『トリあえず』であいうえお作文を書けって宿題が出て、ちゃんとやっていったのに何故か先生に心配された。

頭の悪いコメディですみません。

　今日学校で、『トリあえず』であいうえお作文を作ってこいって宿題が出たんだ。

　あの先生、ぜったいに深く考えずに、トリあえずなんかやっとけって感じで出したでしょう。

　先生はそれでいいかもしれないけど、こまるのは僕たち子供なんだから、ちゃんとしてくれなきゃこまるよ。

　さあ、そんなわけであいうえお作文だ。

　と言っても、いったい何書けばいいんだろう？

　まいいや。トリあえず思い付くままに書いちゃえ。

　それじゃあいくぞー！

『ト』　トウサンが

『リ』　リコンして

『あ』　あしたなんて来なくていいと言いながら

『え』　えんえん泣いて

『ず』　ずっとそのままだった

　よし、こんなもんかな。

　さて、宿題も終わったことだし、外で遊んでこよー。

　……次の日。

　先生はエイジくんの提出した宿題を見て、唖然とした。

　エ、エイジくんのおうちは、こんなことになっているのか!?

　お父さんは、今もえんえん泣き続けているのかなあ？

　そんなんで子供の面倒は見れているのか。

　もしかして、育児放棄なんてことになっていないか心配だ。

　これはエイジくんに話を聞いてみないと……いや待て。

　デリケートな問題だから、下手に聞こうとするとエイジくんを傷つけちゃうかも。

　ああ、こんなことになるなら、あんな宿題出すんじゃなかった。

　いや、宿題を出したからこそ、彼が苦しんでるってわかったのか。

　とにかく、なんとかしないと。

　そんな今のオレの気持ちを表すとこうだ。

『ト』　トツゼンのことで

『リ』　リカイがおいつかない

『あ』　愛する両親が大変なことになった

『え』　エイジくんはどんな気持ちでいる？

『ず』　ずっと一人で抱え込むことない、先生はお前の味方だからなー！

　……てな感じで、先生は心配していたけど。

　その日の放課後、鬼気迫る顔の先生から個人面談をされたエイジくんは、

『このあいうえお作文はフィクションです』って書いておかなかったことを後悔し、

　真実を知った先生は、二度とこんな宿題を出すまいと心に誓うのでした。

　おしまい♪