第3話「塩味の効いた飯」

 今俺は買い出しに来ている。


 理由は遠征の為の装備を整える為である。


 今日受けた依頼で、取って来ないといけないカンポの実。


 実は自生しているというタリア平原がここから1日かかる距離にある場所らしく、周りに町や村もないので基本的に野宿となるらしいのだ。


 買い物の内容は

 

・テント

・ライター

・調理器具

・食器

・缶詰などの食品

・リュック

・ナイフ

・ロープ

・防寒具

・着替え

・水筒

・地図

・コンパス


 全部買うと金貨一枚ほどしたが、背に腹は変えられない。


 コンパスを買うとき、魔導コンパスという登録した場所を常に指すとかいう、すごい便利そうなものもあったのだが、金貨1枚とかなり値段が高く予算オーバーで買えなかった。


 いつかお金に余裕ができたら魔道具なんて物も買ってみたい。


「よしこれで全部か」


 買い出しも終わったのでいざ遠征へ出発だ。


 依頼のタイムリミットまで後5日。行き帰りで二日、収穫に一日かかったとしてもタイムリミットまでには間に合うが、万が一ということもあるので急いで依頼を終わらせたい。


「よし、いくぞ。」

 



           ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


  


 街を出てもしばらくは道が舗装されていたり、家や畑がちらほらと目についた。


 だが、そこからまたしばらく歩くと道は舗装されなくなり、家や畑も無くなり、山沿いに道がいるので落石や土砂崩れもひどく、ひどい時には崩れた土や岩が道をほとんど塞いでいることもあった。


 崩れた土砂を緑が覆い尽くしている場所あったので、ろくに整備もせれていないのだろう。



「はあ、疲れた。いつになったら着くんだよ…」




           ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


  


 結局目的地に辿り着いたのは夕方だった。

  

 道中思ったよりも足場が悪く、到着に思ったよりも時間がかかった。



「つかれた…」



 正直、明日動ける気がしない。


 多分明日は全身筋肉痛だろう。



「そんな事より、早くテントを立てて飯食って寝よう。」


 

 リュックからテントのを取り出して組み立てていく。


 生前?よく家族でキャンプに行っていたので、テントの組み立て方はわかっていたつもりなのだが、自分の知っているテントの構造と違い少し時間がかかってしまった。


 テントを立て終わった頃には、火は沈んで暗くなりかけていた。



「やば、火起こさないと。」



 そこら辺に落ちていた枝や葉をできるだけたくさん集め、リュックからライターを取り出し焚き火を作り、野生動物が寄ってこないように、店で買った獣除け効果があるという薬草も一緒に焚き火の中に放り込む。


 この薬草、燃やすと買ったばかりの本を開いた時のような匂いがして、あまり自分は好きな匂いではなかったが、これをしないと大変なことになるというので、魔物に食われるよりは良いと薬草を炊き続けた。


 テントと焚き火が完成した頃にはもう日が暮れていて、辺りは見たことがないほどの暗闇に包まれていた。



「そろそろ飯作らないと。」



 朝から飯を食わずにここまで歩いてきたので、さっきから腹の虫がずっと鳴いている。


 

「今晩はポトフにでもするか。」



 まずは熱した鍋にベーコン、ソーセージを加え切った玉ねぎとにんじんを加える、少し炒めて川から組んできた水を加え、最後にトマト缶を入れ、調味料で味を整えてから少しとろみが出るまでじっくり煮込めばポトフの出来上がりだ。


 

「いただきます。」



 味はまずまずだが、疲れと空腹のせいか人生で食った飯の中で一番美味いポトフだった。


 飯を食って、緊張が解けると今まで溜めてきた寂しさが込み上げてくる。


 知らない場所にいきなり放り出されて、今までなんとかやってきたけど、今後この世界で生きていけるビジョンが浮かばない。


 知らない街、知らない言葉、知らない文化。


 水道は整備されていないので水もタダではないし、車も電気もない。


 正直、目に入る物全てが恐ろしかった。


 今まで当たり前のように生きてきた世界が死ぬほど恋しい。


 家族や親しかった友人にもう二度と会えないんだろうと考えると自然と目尻から涙が溢れてくる。



「ああ、帰りてえな…」



 俺はこの世界で、果たして生きていくことができるのだろうか。


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異世界行ったら成功できるわけでもない!! アゴラット @agorat

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