幻の青い鳥を求めて

杉野みくや

幻の青い鳥を求めて

 我ら駆け出しの調査団。

 今日は『見ると幸せになる』と言われている幻の青い鳥を探しにやってきた。

 本日の気温は16℃。天気は快晴。絶好の調査日和だ。

 新緑の香りに包まれた山の空気がことさらに美味い。今日はなんだかツイてる気がするぞ!


「隊長ぉ〜」


 お、さっそく隊員からの呼び出しだ。

 期待に胸を躍らせながら声のする方へと向かった。


「どうした3号!?まさか見つかったか!?」

「いや、少しもよおしちゃって……」

「あ、なんだそんなことか。あそこでしておけ」


 そう言って、近くにある茂みを指さす。しゃがめば、ちょうど3号の体が見えなくなるくらいの大きさだ。

 3号は「わかりました~」と告げると、足早に茂みへと飛び込んでいった。

 ちょうどそのとき、入れ替わるようにしてもう一人の隊員が帰還を果たした。


「3号は?」

「お花を摘みに行ってるよ。2号は何か見つかったか?」


 俺の問いかけに対して、彼女は首を小さく横に振って見せた。


「やっぱり、そう簡単には見つからないか」


 思わず息が漏れる。

 探索を始めてからすでに4時間は経過していた。昨日までの分も含めると、計20時間は優に超えているだろう。

 今回は長丁場になりそうだ。


------


「今日も見つからなかったな~」

「とりあえず、今日のところは帰りましょう」


 肩を落とす隊員たちの後ろ姿はとても小さく見える。

 いかん。このままでは士気が雪崩式に崩れていってしまう。そうなれば、1号兼隊長たる俺のメンツが丸つぶれだ。

 何か、気の利いたひと言を言わなければ……。


「なるほど。鳥に会えなかっただけに『』、つって」


 これはうまいこと言えたぞ?と自分の中で手応えを掴む。

 だが、そう思っているのはどうやら俺だけのようだった。


「ハハッ」

「隊長、今日も絶好調っすねw」


 二人はそろって乾いた笑いを浮かべてみせた。俺はいま初めて、人の目から色が消える瞬間を目の当たりにした。

 

 我ら駆け出しの調査団。果たして、青い鳥を見つけることができるのだろうか?

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幻の青い鳥を求めて 杉野みくや @yakumi_maru

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