QP三分間クッキング

スロ男

コッカトリスのトリあえず

QPクエスト オブ ペンデュラム三分間クッキング


 (オープニング)♪テケテッテテッテテ テケテッテテッテテ テケテッテッテッテッテッテッテッテ テッテッテ チャラチャンチャンチャン チャラチャンチャンチャン〜

「本日の講師は龍殺しのお兄さんこと龍止リュウシさんです。よろしくお願いします」

「よろしくお願いします。……なんて堅いこというのもキャラじゃないので、早速始めちゃいましょうかね。えーと、今日の料理は『コッカトリスのトリあえず』です」

「トリあえず……聞いたことない料理ですね」

「ええ、ぼくも初めて言いました、はは」

「えーと。材料はコカトリスということですが、扱う際の注意点など」

「これを観てる皆さんなら説明するまでもないと思うんですが、コッカトリスには石化を促すガス袋があるんでね。これを傷つけないようにトリださないと『ポーズのやりなおしを要求するー!』とかなりかねないんでね、ほんと気をつけてくださいね」

「材料はコカトリス(中サイズ)一頭、パクチョイはくさい数枚、ミオネーゼマヨネーズ適量、ひしお、それから「龍のダシ」ですね。随分と素っ気ないシンプルですね」

「ぼくの作るのは、基本、冒険者の手料理なもんで。さっと作ってさっと食べる。味濃いめでエールをきゅっといける感じを目指してますんで」

「ミオネーゼというのは聞きなれない調味料ですが——」

「んなわけあるかいッ!」

 龍止お兄さん、怒声をあげ、

「卵に油に柑橘レモンでできるやろがい! こんなもん転生者トリッパー知恵ちえとかいらんわッ!」

「はい、どうどう。え、さて。ではまずはコカトリスの解体からお願いできますか?」

「はい、解体したのがここにあります」

「ここ一番の見せ場じゃないんですか?」

「ぼく、料理人じゃなくて料理研究家なんで。時間も押してますし」

「……はい、ではコカトリスを三枚に下ろした、え、三枚に下ろしたんですかコレ? ガス袋大丈夫だったんですか?」


 テロップ「危険なので真似しないでください。コカトリスは専門店で捌いてもらいましょう」


「では、このコッカトリスの正肉しょうにくをブツ切りにします。一口大ですね。シノワ揚げぐらいの大きさでいいんじゃないかと思います」

「はい、切れました。これをどうするんですか? 揚げるんですか?」

「蒸します。パクチョイを蒸し皿の代わりに敷いて、と。蒸し上がったのがこちらです」

「お肉のいい匂いがしますね。ちなみに蒸し時間はどれぐらいが」

「八時間も蒸せばいいかと。硬めが好きな人なら六時間。柔らかめが好きでも十時間はやりすぎです。溶けちゃいますからね」

「この蒸し上がったコカトリスをどうしたら——」

「ああっ、もう!」

 再び怒声を上げる龍止お兄さん。

「俺がさっきからコッカトリスコッカトリスいってるのに、あんたぜってーコッカトリスって言わねえな! あんた、俺のことバカにしてんだろ!」

 一瞬の間。

「……してますんけど」

「なら、いいや。んでね、ここでトーシロはミオネーゼにえちゃったりするんだよね。違うの、和えないの。なんのためにコレあると思う?」

 取りいだしたるは龍のダシ。

「これね、よく言う人いるんだけど、龍のダシとか使ったらなんでもおんなじ味になっちゃうとか体に悪いんじゃないかとかね、そんなことないから。使えるものは使う。簡単だし、味ブレないし、なによりうまいから」

「その龍のダシを、」

「ミオネーゼに混ぜる。あ、混ぜる際に先に龍のダシをちょっとのお湯で溶かしておくといいかな、そのほうが混ざりやすいです。隠し味に醤を数滴」

「ほうほう」

「はい『コッカトリスのトリあえず』完成です!」

「はい?」

「盛り合わせはワンプレートでこう! 押忍‼︎ クソ冒険者メシ‼︎」

「え、トリあえずじゃないんですかッ⁉︎」

 蒸し上がったコカトリスを適当に盛り付け、龍のダシ入りミオネーゼがその脇にたっぷりと添えてあった。その皿を卓に投げつけるように置く。

「ミオネーゼは添えるだけ……」

「いやね、これが酒に合うんだって。冒険者の料理はこう!」

 いいから食べてみろ、という具合に目顔で促す龍止お兄さんに、お手伝いアシスタントは恐る恐る鉄串を刺して口に運んだ。

「おいひい!」

 満面の笑顔のお兄さんと目を丸くするお姉さん、ヒキの映像で番組提供の画面へと変わった。


 *****


「なあ、あの『龍のダシ』ってどうみても創○シャンタンだよな?」

「あー、間違いないね。ていうか、そもそもあの人って転生者だろ、こっち来る前YouTubeで見たことあるわ」

「転生者のくせに転生者嫌いってのはなんだろうねえ」

「まあキャラでしょキャラ。龍殺しドラゴンスレイヤーってのもキャラだろうし」

「まあ十分休んだし、そろそろ龍退治に向かうか」


 危うく龍に返り討ちに遭いそうになった冒険者が、龍殺しのお兄さんに助けられるのは、また別の話。

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