Living funeral alone

釣ール

同じじゃなくていい

 都合がいいことばかり求めてるかつての知り合いがいた。


 話を聞く度に離れたくて仕方なかった。

 はるか昔の話だから参考にも伝説にもならなかった日常のひとつ。


「くだらない。

 時間を無駄にしたよ。」


 田舎をあざ笑い、固定概念こていがいねんに抗っても誰にも感謝はされない。


 人間に見切りをつけたつもりがどうにもほおっておけなくなってしまった。

 この選びぐせが嫌で嫌で仕方がなく、そして睡眠時間だけは確保したかった。


 歌にしたかったなあ。

 音楽や芸術の思い出は義務教育によってうちくだかれた。

 あの教師共が教師じゃなかったらそれなりに敬意を持てたと思うもったいない論が時代錯誤もはなはだしかった。


 どこの次元でも変わらなさそう。

 なぜなら人間だから。


 何度も何度もAIやビジョン、頭の中をそのままプリントアウトできそうな技術を期待したり待っていた。


 なんて受け身でロマンあふれる我ながら頭の弱い妄想。


 だが、それらも今や人生終盤だからこそ言えるネタでしかない。


 これ以上ツマミにしたくない思い出が増えてもいらない悩みを抱えるだけ。


 どれも時代遅れだった。

 呪いも、前向きさも、賛歌も、暗さも。

 水槽すいそうから抜けてしまえばただの情報。


 せっかくの生前葬せいぜんそうで一人でしか行ってないとはいえ何も残さないクリーナー体質では受け身のループから抜け出せたとは言えないのかもしれない。


 文学チックな才能も限度があるし、自分にはあまりあるとは言い切りたくもなかった。

 数字主義じゃない人間たちとも相容れないのか。

 かつてもそうやって絶望していた。


 公平さを早く持てば良かった。

 せっかくの余生だ。

 無駄はやめよう。


 もう使い古されたネタだ。

 老後にどれだけ予算があったか?という映画でもそう。


 同じじゃなくていい。


 軽くやったはいいものの、まだ時間が残ってしまった。


 さあ~~~て。

 これからどうする?

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