損壊とか美学とか

 「先輩ってフェチ濃いよね」

 「私のこれはフェティシズムではないですよ」

 「恥ずかしがらなくてもいいのに」

 明らかに性癖なのに先輩は美学だ、と言い張る。

 切り取られた足の切り口に射精したものを持っている状況で言われても説得力がない。

 「死体損壊に美学もクソもなくない?」

 「美しいパーツを自分なりに選別しているんです」

 「はぁ」

 それって美人は抜けてブスで抜けないのとかと一緒じゃねぇの、と口に出かけたが噤んでおいた。

 「大体、お前は見境なさすぎるんですよ。臓物だったら何でも良いとか」

 「そりゃ大体一緒だし」

 「なんかもっとこう、あるでしょう、曲線美とか」

 「まぁ元気な方が嬉しいけど」

 「死体のパーツに元気もクソもなくないですか」

 「なんか鮮やかでプリッとしてたりとか、さ」

 「はぁ」

 多分お互いに分かり得ないことはあるんだろうな。

 その辺を埋め合いながら、俺等は共生してるんだろうし。

 「お前のそれは完全に性的倒錯ですよ」

 「まぁ否定はしないけど」

 自分は認めないのに割とズケズケ言うな。

 「私は美に耽溺しているだけです」

 「それが死体損壊なんだ」

 「なんかそう言われると嫌ですね」

 嫌なんだ。

 「殺害に関してはなんか美学ないの」

 「なるべく原型を保ってありのままの姿のまま、とか」

 「俺と真逆ー」

 俺はどっちかっつーとグチャグチャ血みどろスプラッターな方がお得感がある気がする。

 だって、殺すときしか見れない光景だから。

 「まぁ楽しけりゃいいよ」

 「それは、まぁ」

 遊興だし、結局は。

 そんなに気負ってするもんじゃないよな。

 「二人で力合わせりゃ何だって出来るって、多分」

 「後輩が代わりに講義受けたりとか」

 「しないね」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

夏とか殺人とか 鶏殺臓物地獄 @1zanziro

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ