第24話:見知らぬ女性キャラ
とある日の事、学園の図書室の一角にて俺はリィンと共に勉強をしていた
シズクの命令で彼女に勉強を教えることになったんだが……なんか普通にリィンは頭がよく、なんというか魔法に関しては俺より詳しかった。
「えっとここに書いてある攻撃呪文に関してなんですけど、別の呪文と組み合わせたりとかって――」
専門的な質問数々、冷や汗を流しながらも俺なりに考えて答えているが……その知識量は半端じゃなかった。一応ゲームプレイした故に前世で見たテキストのおかげで答えられてはいるものの……そこまで熱心に勉強してなかった俺からするとやはり答えるのが難しい。
「……えっと、確かに二種の魔法を合わせたわざとかはあるな」
というか今の質問内容って完全に二年生に上がったときのイベントで覚えるはずのものだし……習ってないはずなのに辿り着くとか、この子は天才なのだろうか?
いや、確かにルートによっていろんな成長を見せてたから天才ではあるのだが――こうして実際に目にするとやっぱり凄い。
「やっぱりそうですよね! 魔法を試してるときに、この魔法って組み合わせたら凄いじゃないかって思いまして――試してなかったんですけど、出来るんですね!」
「……あぁ、炎の魔法は雷の魔法と合わせられるし――植物の魔法と土の魔法は相性が良い。例えば――」
彼女にゲームで使うことの出来る複合魔法の説明をしながらも、俺はすぐにお役御免になりそうだなと感じて少し苦笑いをしながらも勉強を進めていく。
「カグラ、そろそろおやつ食べたい」
「あーその時間か、ちょうど良いしリィンも学園の庭で何か食べるか?」
「えっといいんですか? 私が一緒で」
「別に良いだろ、イザナもいいよな?」
「うん、こないだ貰ったクッキー美味しかったから」
相変わらずのようなイザナの判断基準に笑ってしまったが、それを言うってことはリィンに懐いてるって事なので良いことではあるだろう。
「……嬉しいです。えっと、私今日もクッキー焼いたので持ってきますね!」
照れたのか慌てて図書室から出て行くリィンを見送って俺は、放置された本を片付けることにした。
そして本をあった場所に戻しながらも図書室から出ようとしていると、高い場所の本を取ろうとしている金髪の女性生徒を見つけた。
「えっと、大丈夫か?」
「――え、あ……はい。ただこの上の本を取りたくて」
話しかけるまで誰か分からなかったんだが、そこにいたのは俺が苦手意識を持っているルナという少女だった。内心しまったと思いながらも、声をかけた以上変に離れるのも不自然なのでひとまず少し話すことにする。
「ん――上のどれだ?」
「えっと、魔法に関する本なんですけど」
「あーこれか、取るから待ってろ」
やっぱりなんでか分からないが、この生徒の敬語というか態度に俺は違和感を覚えてしまう。魔法の特性もあるけれど、彼女はどこまでも本心じゃないのか内面が一切見えない――それがあまりにも気持ち悪くて、取り繕わないとまともに話せない。
「あ、ありがとうございます! ――えっと、優しいんですねカグラ様って」
「そっちこそ、これって二年の内容だろ? 勉強熱心なんだなあんた」
「……はっ、はい。私は勉強が好きで――魔法をもっと勉強したくて……」
そこで感じるのは既視感だった。今まで感じてた違和感とは違って、明確に聞いたことのあるような台詞。何かと思って探りを入れるために頭に浮かんだ言葉を言うことにする。
「そうなのか、凄いな君。俺は魔法があまり得意じゃないから尊敬するぞ」
「い、いえ。私なんかはまだまだで――もっと頑張らなきゃって」
そしてまた感じる既視感に、俺はゲームでの台詞を思い出す。
今の一連のやりとりは、ゲームでのカグラルートのリィンとの出会いの際のものだ。なぜこの言葉を選んだのか、それとも無意識なのかは分からないけど……こいつには何かがある。
「……あの! よかったら一緒に勉強しませんか? 魔法が苦手なら一緒に見つけられることもあるでしょうし」
「あー悪いな、先約があって時間がないんだ」
「そ、そうなんですね――それなら仕方ないです」
「本当に悪いな、でもこれも何かの縁だ――今度時間が合ったら一緒にやろう。えっと君の名前はなんだ?」
「ルナ……ルナ・リリアスです」
やはり原作である『徒カネ』では聞かなかった名前。
その彼女が王太子達と関わっているという状況がやはり分からないが、もうちょと詳しく調べた方が良いだろう。今までは関わる気がなかったから家名も気にしてなかったんだが……この違和感や既視感を拭うためにも、シズクのツテで調べて貰うか。
「ルナさんか、俺はカグラ。カグラ・ヨザキだ。よろしくな」
「はい――よろしくお願いします、カグラ様」
好感情も悪感情も感じない、一切の無。
それがあまりにも不気味で、そしてなぜか彼女がそんな態度を取ってるのが嫌で……俺はやっぱりムカついた。
――――――
――――
――
ルナ・リリアスは図書室を後にしながら一人しながら考えに耽っていた。
やっと話すことの出来たカグラとの事を思い、ゆっくりと……何より歓喜を込めて言葉を発する。
「……時間かかったけどやっとだね、皇帝は完全に無理そうだけど……カグラはまだ可能性がありそうだ」
夕暮れに照らされる校舎を後に彼女は寮へと戻っていく。
ふつふつとあふれていく喜びにスキップしたい気持ちが抑えられなくなってくるが、それを抑えて言葉を続ける。
「逆ハールートはこれでいいかな? リィンの立場を奪うのは難しかったけど、内容は暗記済みだしね。あとはそれっぽくやれば終わりそうだ――あぁ、これでようやくこの世界を壊せる。リィンには悪いけど、これも全部この世界が悪いからね」
自分の野望を改めて口にして、彼女は笑う。
そしてこれからの計画を立てるように考えを巡らせて、一人女子寮に帰っていく。
「――これはボクの復讐だ。あいつを奪ったこの世界への」
そして寮で一人、弱々しい声音で自分の大願を告げて――ゆっくり眠りへと落ちていった。
RPG系の乙女ゲー世界に転生した俺は、監禁ルートを逃れたい~和洋折中華各ルートの悪役令嬢達が全員こっち見てるんですけど、今から逃げる方法はありますか?~ 鬼怒藍落 @tawasigurimu
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