めがね

大黒天半太

眼鏡にはめがねー

 小さな頃から視力が弱く、何をするにも眼鏡は手放せなかった。


 小さな頃からだから、眼鏡がないならないで、なんとなく分かる程度には分かるが、ぼやけた世界は、眼鏡を通せば、一瞬でシャープにピントが合う。

 命のかかった冒険者になってからは、周囲の危険を見落とさない、命綱の一つでもある。


 自分の目にあった眼鏡は、ある意味私には救いだ。よくわからないものが、何かはっきりわかる、何をすべきか理解できる、耳で聞いたことを目で確認し、誤解や曲解はなく、そのままでいいと確信できる。

 こうしてみると、目の認識力は、視力が弱い私でも、いや視力の弱い私だからこそ、かなり大きいことが理解できる。


 だから、いい眼鏡には目がないし、いい眼鏡が入手できるなら、金に糸目は付けない。

 「眼鏡にはめがねぇ」と言うと、単なる駄洒落になってしまうが……


 そこが第一歩であり、人生全てのクオリティを上げる入り口になるからだ。


 自分の人生で、何に重きを置くか、全体が見渡せてこその、取捨選択だろう。

 見えていないのでは、何を切り捨てるにせよ、説得力も無い。


 魔法の眼鏡もある。闇を見通す『暗視』、魔力を帯びたものが見える『魔視』、隠されている罠や宝、隠れている敵が見える『看破』の眼鏡も、あるという。

 そして、その全ての力を兼ねるという『真実』の眼鏡も。


 故に、何としても、手に入れたい。私の、子供の頃からの弱点を補えるという、その宝を。


 魔境には、ありがちな小さなダンジョンだが、魔法の眼鏡が宝物としてあるらしいという情報を得て、仲間達に頼み込んで、挑むことを決めた。


 小さなダンジョンにありがちな、スライムより大きい程度のスラッグ(オオナメクジ)等、弱い魔物しか、現れない。

 ただ、驚く程目玉がデカい。触覚の先に重そうな球体が、こちらを睨んでいた。


 奥に進むと、ダンジョンの天井も魔法で発光し、部屋に入ると、壁の松明を模した形のアイテムに、炎が灯るように明るくなる。炎を模した魔法の灯りだ。


 入り口から、最初の数フロアまでと、それを越えてからのフロアが全く気配が異なる。

 ここまで奥に入った、物好きな冒険者はいなかったのか、灯り関係だけとはいえ、魔法が使われており、レベルが違う。


 仲間達と、私の読みが外れたこと、ランクが上のダンジョンで危険度と宝物の期待が跳ね上がったことを、話し合わねばならない。


 このまま進むか、一旦退却して準備を整えて再アタックするか。


 まぁ、仲間達から言われることは、もうわかってる。

 「進む気満々の目の色してる」と。


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