『告白』

苺香

第1話

『告白』                                


1空は暗い

雷が鳴る


2高校の校舎

海の音は雨音にけされる


3同・教室

ひとり小説を読んでいる尾上玲奈(17) 。

廊下で立ちすくむ、ずぶ濡れの長谷健太(17) 。

決意したように教室に入る。


健太「...尾上...」


玲奈「長谷君...」


健太「忘れ物しちゃってさ。外はひどい雨だったよ」


玲奈「...そう。海も波が荒いね。明日から長谷君が通う高校は海がみえるかな」


健太「今度は海はみえないよ」


玲奈「...そっか。ちょっと、こっち向いて。前髪がおでこにこびり付いているよ」

玲奈、泣き笑いの表情。


健太「何の小説読んでいたの?」


玲奈「『海の見える理髪店』」


健太「最後に”前髪の仕上がりが気になるから、お客さん、もう一度、こっちを見て

ください”って言うんだよね。ホントは顔を見たいくせにさ」


玲奈「やだ...長谷君、もう読んだんだ」


玲奈、恥ずかしそうに俯く。

健太「もう暗くなるから帰ろうか」


4湿った小路

二人で歩く。無言。ゆっくり歩く二人。


5玲奈の家の前

健太「じゃあな。元気でな。尾上、前髪に何か付いているよ。こっち向いて...」

玲奈、まっすぐに健太を見つめる。


玲奈「…まどろっこしい言い方しないでよ」

二人は目で会話をする。


遠くから波打つ音が静かに響いた。    


                   了                    

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