とりあえず、この美少女のオレに似合った服持って助けに来てくれ〜

中島しのぶ

とりあえず「朝おん」

 ひどい頭痛と全身の痛みで朝目が覚めると「朝おん」していた――朝、女の子になってるから「朝おん」だけど、これが昼間だったら「昼おん」? 夕方だったら「夕おん」? 夜だったら……って、オレは何考えてるんだ?


 オレは清村忍、33歳独身。身長165センチ、体重50キロやせ型。顔は普通。

 どこにでもいる極々普通の男――彼女いない歴と年齢が同じ――なのに、魔法使いになる前に女の子になってしまった。


 覚えているのは、昨日23時過ぎまで残業し、帰宅後に40℃近い熱が出てそのまま寝たこと。

 起きて頭を振るとサラサラと髪が顔に当たる。

 見ると金髪。

 身体に違和感を感じたので胸を触る――ある。股間を触ると――ない。


「あーね、オレ女の子になっちゃったんだ」なぜか妙に納得してしまった。

 声もちょっと鼻にかかったツンデレ声だ。

 いったいどんな顔になってるんだろうかとスマホの液晶画面を見ても、ボヤけてる。顔認証もできない。

 しょうがない。洗面所に行こうとベッドから起きあがる……あ〜小さな手……足も小さい。

 おまけにパジャマもでかい。


 洗面所の鏡を見てオレは驚きで息が止まった――見た目16、7歳。長い金髪なのはいい――目が赤い!

 充血してるんではなく、まなこ・瞳・虹彩が紅い!

 これじゃ白いウサギさんじゃないか!

 長い金髪なのはまぁなんとか許せる。最近は年寄りも金髪にしてるからな。

 しかし何で目が赤いのか? 分らん。


 TSした元男、TS娘は美少女だという。

 御多分に洩れず、オレも美少女だ。ただ背が低い。胸も小さい。残念すぎる。


***


 このままじゃいかん。

 まだ朝7時なので出勤の支度を――と思ったが、この格好じゃ会社には行けないぞ。

 どどどどどうしよう!

 急に不安になる。着ていくものがない。じゃなくて、女の子になったんだぞ、オレ。

 もし仮にだ。今手元にスカート、ブラウスとジャケットがあったとして――あ、あとは黒ストとパンプスか? それにパンツもブラも……いや、ないけど――それを着て会社に行っても、誰も信じてはくれない。


 む〜困った。

 そうだ。近所に住んでる同僚の勝野にメッセ入れておくか。

 が、なんて説明すればいいんだ?

『オレ、女の子になっちゃった〜てへぺろ(・ω<)』――あほか?

 そうだ。自撮り写真を付けて送れば信じてくれるだろうな!


『オレ、女の子になっちゃった〜🤍 とりあえず、この美少女のオレに似合った服持って助けに来てくれ〜』


Fin.

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とりあえず、この美少女のオレに似合った服持って助けに来てくれ〜 中島しのぶ @Shinobu_Nakajima

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