ローナ・オンライン 〜ハチャメチャやらかす連中を遠くから見ている位が丁度いい〜

ランドリ🐦💨

第1話 シチュエーション成立の為の攻防

 水色の鳥の姿で、城壁に囲まれた街の上を旋回する。

 

 ローナ・オンラインでの僕の目的は、自分で冒険することじゃなくて人の冒険を眺めることだ。


 このアバターも戦闘のことなんて微塵も考えていない移動力・回避率特化型。


 僕みたいなタイプのプレイヤーのことを観光客という。


 そんな僕が最近ハマっているシチュエーションがある。


「トリあえず、今日も新人見物に行こうかな」


 僕のつぶやきに反応した案内機能が、水色の鳥姿の僕を新人たちが日々新たなシチュエーションを紡ぐ冒険者ギルドへ導く。


 あえて高く作られた入口を通り抜けた僕の体は、梁の上に作られた観光客専用の酒場に着陸する。


 梁の下では自分で冒険するタイプのプレイヤー、冒険者でごった返しており、種族も普通の人間だったり、耳が長かったり、ヒゲモジャだったりと色々だ。


「マスター、トリあえずエールを」

「かしこまりました」


 僕は下がよく見えるようにバーカウンターの端に座ると、酒場のマスターであるシャツの上にベストを着こなしたネズミにエールを注文する。


 素早くエールの注がれたジョッキはマスターの手によりカウンターを滑り僕のところに来た。


 手のように物をつかめる不思議な羽で、ジョッキをつかみ持ち上げる。


 何か味がする訳ではないけど一気に飲むことで雰囲気を楽しんでいると、足元で僕が求めているシチュエーションが始まった。


 梁の下では受付へ行こうとする少年をガラの悪い冒険者が足を伸ばして通れないように妨害している。


 周囲のの冒険者達は息を呑むばかりで、その蛮行を止める様子はない。


「『疾風脚』!」


 それで終わらないのが、ローナの新人冒険者だ。

 少年は差し出された足めがけ、風纏う蹴りを敢行する。


「なんの! 軸固定。か〜らの『回転蹴り』!」


 対するガラの悪い冒険者は、座ったまま回転し始めると、座っていた椅子やテーブルごと少年の蹴りを弾き返した。


 今日も僕はトリあえず見に来た光景に満足するとログアウトした。

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