【KAC20246】パパ上様日記 ~我が家の愛しい鳥たちは~

ともはっと

我が家の美しき鳥は今もどこかで――



         トリあえず。


 私は今回のお題を見た時、ふと思ったのが、機動戦士〇ンダムで【トリアーエズFF-4】って戦闘機があったなぁって最初に思ったけど、これわかる人あんまりいないんだろうなぁ。





 そんな今回のお題、トリあえず。

 私は今回、鳥会えず、でいってみようと思う。







 さて。本日記の本家本元、【パパ上様日記】では書いた話ではあるが、私の家には二羽の小鳥がいた。

 ペットショップで同じ籠の中にセットになって入っていたセキセイインコの小鳥だ。


 緑色だから『みどり』と『グリーン』で【ミグ】。

 青と白の色鮮やかだから『レインボー』と『にじ』で【レニ】。



 そんな二羽はとても仲良く。

 荒々しく飛び回る荒鳥のミグと、静かなること風のごとしのレニ。


 ミグがメスだったという驚きもあった。

 レニが乗っかって繁殖した後に寄り添う二羽を見て驚愕する我が家族たち。

 子供たちからすると、交尾を初めて間近で見た衝撃も、もちろんあっただろう。


 そんな二羽。


 ある日、一番可愛がっていた妻のティモシーが鳥かごを落としてしまい、混乱の極みとなって二羽は外へと飛び立ってしまった。

 私が会社に辿り着いて数分の出来事である。

 もちろん、大泣きの妻から連絡がきてとんぼ返りである。

 話を聞くと、泣きながら町内を歩き回って、「みぐー、れにー」と私が帰宅するまで歩いて探し回っていたらしい。


 何日も。私も休みの日は近場を歩き回って探したもんである。

 ……結果は、会えず。鳥に会えず。トリあえず。




 諦めよう、そう話したその数日後。



 荒鳥、ミグは戻ってきた。


 気のいいお方が、我が家よりなん十キロと離れた場所の河川敷の散歩道で、ぐでーと力尽きてへばっているミグを見つけ、保護してくれたのだ。


 どれだけ飛び回ったのか。綺麗な尾羽が抜けていた。

 怖い目にあったのだろう。

 でも、我が家族たちを見たミグが、一心不乱に籠の中から出てこようとしているのを見て、拾ってくれた家族の方に、


「皆さんのこと覚えてたんですね。私の家で私達みてもこんなに騒ぐように動かなかったです。静かなもんでしたよ」


 と言われたときは、不覚にも、「うっ」となったのはいい思い出だ。



 戻ってきたミグ。

 だけども、レニは戻ってこなかった。

 今も生きている、そう信じたい。だけども、きっと、先にお空へと行ってしまったのだろう。



 自宅に戻ってきたミグ。

 やっぱり色々あって疲れていたのかもしれない。

 最初はかなり静かに、籠から出ずにじっとしていた。

 時々寂しそうに。今まで全然泣かなかったのに鳴く声を聞いた私達は、もう一羽、セキセイインコを購入することにした。



 それが、キー。


 黄色だから、『きいろ』と『イエロー』で、【キー】である。



 これがまた、ミグのことがとにかく大好きで。

 ある程度成長したところでもうミグの上に乗っては腰を振る。

 ミグも何度も乗られて諦めて「ぐぅ、重い」という表情をしているようにも見えてくる。


 そんなに乗られれば、たまごもたくさん産むわけで。

 だけども鳥かごのてっぺんで巣の中で産まないもんだからすべてが割れる割れる。割れないものはなぜかキーが割る。

 時々、疑卵いう、卵に似せたものを置いておくと、必死に温めるミグを見ると、一羽くらい産ませてやろう、なんて思ったもんだけど、そんなときに悲劇が起きた。



 ミグが、卵を詰まらせて死にかけてしばらくして、卵を産んだと同時に腸を外に出してしまったのだ。

 血まみれのミグを連れて病院へと走るティモシー。


 全てが終わった後に帰宅した私。

 そんなことを知らず、ぐったりしているミグを見て、「血まみれじゃん」と私がいうのは、ぐったりしている家族たちがどれだけ頑張っていたのか知らないからこそ言えることだった。


 獣医に思いっきり腸を押し込まれたミグ。

 抗生物質入りの薬を飲んで過ごしていく。


 ミグは可愛い。

 なぜなら、私が休みの日に放鳥すると、ひそっと肩に乗ってきてそこで一日中ずっと過ごすのだ。

 トイレに行けなくて漏らしてやろうかと思う程に。

 それこそ、耳元で「みぐけけきーけけ、みぐけけきーけけ」と謳っては私の耳を人かじりしていくキーより可愛いもんである。




 ミグがなぜそんなことをしていたのかが、分かるまでは。





 ミグは、抗生物質で弱った体に、メガバクテリアという菌に犯されてしまっていた。

 おえおえと嗚咽を繰り返すようになり、おかしいと思って病院につれていったときにわかったことだった。

 日に日に弱っていくミグ。

 ご飯を食べても消化できないほどに弱り、私の肩に乗るために飛んできて、その飛んだ時の風や着地したときの衝撃に耐えられないのかおえおえとするミグ。体調管理もできず、常に体を膨らませるミグ。

 それでも生きようと懸命に温かい場所を求めて私の肩に乗るのだと知った時は、「うっ」と、もう涙が止まらなかった。


 ある日、薬によって、大量の糞をお尻に固めてしまい排泄できなくなったミグを見かねて、お尻を綺麗にした。

 こたつの中が温かいからと好んで入っていたミグを、家族が一緒にこたつに入って共に温まる。


 最後に、家族全員が揃ってこたつに入ったところで。



 ミグは、こたつの中で息を引き取った。



 目から光がなくなっていくミグ。

 どんどん固くなっていくミグ。

 キーを放鳥してあげると、すぐに近づいてつんつん叩いては「みぐけけきーけけ、みぐけけきーけけ」とミグを称える歌を歌う。

 じっと、目を開けて、最後を迎えたミグ。



「みぐけけ……」と静かに鳴くキーに、我が家族は、ミグというペットを喪ったことを理解した。






 鳥会えず。

 不注意でいなくなってしまった鳥。

 最後まで生きようと頑張って息を引き取った鳥。

 命の尊さを教えてくれた、鳥。


 そんな鳥に、もう会うことはできない。

 私たちはあの綺麗で可愛い、子供たちのとって初めてのペットにはもう会えない。

 だけど、その二羽は、きっとお空で仲良く暮らしているのだろう。




 わたしは今日も、一人きりになったキーに、とりあえず耳をかじられる毎日を、過ごしている。










 鳥、会えず。





 だけども。



 我が家は今日も、



 平和である。







 了

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