チビ介クッキング終わり良ければ――?

「先輩のために作っているのに逃げようとするし。気絶するし。起きても味見してくれないし」


 キッチンで何やら言ってるチビ介。

 ちなみに俺はまだ生きていると言っておこう。

 そして――驚くべきことにというべきか。

 ちょっとニンニクのにおいも強いが。それでもおいしそうなたれ?焼き鳥の香りがしていたりする。

 ホント驚くべきことだ。

 一時はどうなるかと思ったのに――。


「――寿命が縮んだ気がする――」

「そんなに女の子に料理作ってもらって嬉しかったんですか?」


 違う。


「まあ、とりあえず――先輩。ご飯ですよー」


 笑顔でそんなことを言いながら俺の前に真っ白なご飯が入った丼ぶりが置かれる――うん。ニンニクのにおいはするな。チビ介が近寄って来ると。

 って、白米はいつの間にか準備されていたらしい。

 事前に?いや――もしかして俺かなりの時間気絶していた?それとも――いや、まあいいか。とりあえず、生肉よりまともというか。安全。おいしそうな白米――って、いやいや、このたれの香り。焼き鳥どこ行った?というか。


「あの――俺いつまで手錠で拘束されているわけ?」


 そう、俺まだ手錠で椅子に固定されている。

 暴れたら――脱出はできるが。今のところはチビ介が解放してくれるのを待っているところだ。


「あー、食べさせてあげますねー」

「いやいや、なんで?」

「それの方が面白そうだからです」

「やっぱりめっちゃ遊ばれている――って、チビ介よ。近寄って来るとマジでニンニク凄いな」

「――まさかのこんなににおいが――」

「それは予想外だったんかい!」


 気にしていないと思いきや。

 チビ介。めっちゃ気にしていた。

 そして恥ずかしそうにまでしていた。

 これは――おっちょこちょい?いや――なんだろうな?でも恥ずかしそうにしている姿は――まあありだ。って、そうじゃなくて。


「なんやかんやあっても、うまそうな香りしてるし――普通に食いたいんだが」

「えー、チビ介とか言ってくる先輩に食べさせるものはないですね」

「なら何故俺はここに――」


 すると、チビ介がたれの入ったお皿を持ってきた。


「うん?これは――たれ?」

「多分たれです!」

「多分――」


 見た目は焼き鳥とか、てりやき?のたれに見えなくもない。って、あれ?焼き鳥丼とか言ってなかったか?

 すると、今度は焼かれたネギと鶏肉が乗ったお皿が出てきた。

 串には刺さっていないが。確かに焼き鳥っぽい。というか、料理をしないとか言いながらこいつ――そこそこ普通に料理してるじゃん。すごいじゃん。

 ――ニンニクのにおいすごいが。


「じゃあ、仕上げにたれに投入します!」

「あー、そういう。たれ付けて焼くじゃなかったか」

「あれ?焼き鳥って――そうでした?」

「マジか。まあいろいろあるだろうが――」

「まあまあ。とりあえずですとりあえず――うん?」

「うん?どうした?」

「いや――とりあえず――トリ――あえず」

「うん?」


 すると、1人でぶつぶつ言い出したチビ介。


「先輩」

「うん?」

「トリ――あえず。いきましょうか」

「――馬鹿になった?」

「素の味を楽しむ。そうです。鳥はあえずにそのままもおいしそうじゃないですか」

「なんか言い出したぞ」


 マジでなんか言い出した。なんでそんなことを思ったのかは知らんが――。


「ってことで先輩。先輩はたれにあえないバージョンの鶏肉とネギで食べてください。私はたれとあえた鶏肉とネギで食べます」

「ちょっと待て!絶対たれあった方がおいしい――って、手錠!手錠何とかしろ!」

「嫌です」

「椅子壊していい?」

「その場合は残っている生肉食べないと帰らせませんから」

「何それ!?」


 生肉は食べたくないが――絶対なんやかんや調理過程は怪しいところあったが。今机の上にはおいしそうな丼が出来そうな材料がそろっている。


「じゃあ先輩。食べましょうか」

「だから。何故自分だけたれを混ぜ――」


 バキッ。


「「あっ」」


 いろいろこの後あると思うので先に言っておこう。

 一般的な家庭にある椅子に固定したくらいでは、ちょっと暴れたら椅子が負ける。

 以上である。

 というか。『はい。生肉決定!』見たいな顔しているチビ介が怖い!めっちゃ怖い!

 

 と、この後どんちゃん騒ぎ?があったとかなかったとか。俺の生命の危機があったとかなかったとか――なお、チビ介はめっちゃ楽しんでいた。


 これは俺と後輩のとある日の出来事――って、肉はちゃんと焼け!




 了

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後輩が俺のために頑張ってくれるのだが――手抜き過ぎる! くすのきさくら @yu24meteora

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