チビ介クッキングスタート

「でわでわ。焼き鳥丼作っていきますよー!」

「なんか意外だな」


 キッチンへと入ったチビ介を一応見守る俺。

 なお、チビ介は着替えるのが面倒ということで制服にエプロン姿である。


「男子はガッツリ系が良いって聞きまして」

「まあ、確かに焼き鳥丼?食べたこと――ないかもだが。旨そうな感じだな」

「ですよね。私もおいしいと思いまして」

「――もしかして、チビ介が食べたくなって作ってみるに付き合わされている?」

「またチビ介――って、いいですよー。この後超完璧な焼き鳥丼を先輩の前で食べますから」

「それ――俺居る意味なくね?」

「ですね」

「じゃあ帰るか」

「ダメです」


 くるっと俺が向きをかけて帰ろうとすると包丁を持ったままチビ介が――って。


「ちょちょ。包丁持って迫って来るな」

「先輩への愛がこんな形に――」

「適当な事言うな」

「言いました」

「素直でよろしい――じゃなくて、危ないから」


 俺が言うとチビ介はキッチンへと戻る。


「とにかく。先輩を落としますから。そこに大人しく居てください」

「なんでこんなことに俺は巻き込まれているのか」

「先輩チョロいですから」

「俺の扱いよ――って、チビ介よ」

「――先輩喧嘩売ってますよね?」

「まあ」

「素直でよろしい。今日だけは大目に見ましょう」

「さすが。って、今何しようとしている?」


 俺は話しながら手を動かしていたチビ介の手元を見る。


「えっ?焼き鳥作るんですよ?」

「――いつの間にか手に持っているニンニク――というかそのの量がやばいというか――手で握り潰すものなのか?俺は料理しないから知らんが――」


 そう、この後輩。いつの間にかニンニクを手にしていたのだが。それを手でつぶしている。それって――あとあとにおい?大丈夫?とかふと思い声をかけた俺だったが――チビ介。特に気にしていないらしく。


「大丈夫ですよ。雰囲気でいきますから」

「ちょっと待て、チビ介よ。料理するのか?」

「しません」

「……」


 ヤバいな。


「なら何故急に――」

「先輩を落とすためです」

「それ――生命絶たせるつもり?」

「そんなことするわけないじゃないですか」

「――いやいや――」


 恐ろしい気がしてきた。

 と、俺が思っている間も料理はしないと言いながらも何故か手際よくニンニク潰して――だから手でつぶすものなのか?

 からの、しょうゆや砂糖――酒?とかを測ることなく適当にボウルに入れていく――そしてそしてバンバンと。鶏肉を切り刻む――チビ介。って。


「ちょちょ、絶対危ないというか。まな板が負ける!」


 振り下ろすように鶏肉を一口大にしようとしているチビ介。見ているこっちは普通に怖い。


「大丈夫ですって、切れれば」

「なんかストレス発散になってないか!?」

「はいはい。先輩は大人しく椅子に座っていてください」

「出来ねーよ!明らかにチビ介が腕切り落としそうだし」

「そんな怖い事しませんよ」

「しそうだよ!」

「もう。先輩。過保護ですね。って、大人しく座って楽しみにしていてくださいよ」

「楽しみに出来ねーよ!」

「むぅー、お座り」

「犬じゃねぇよ」

「お手」

「包丁向けるな!」

「元気な赤ちゃんですね」

「お前な」

「よし。拘束しましょう」

「はい?」


 ということで、いろいろこの後もなんか言い合ったのだが――。

 まあこの後少しして、身の危険を感じた俺。『よし、今日は帰ろう』と、なったのだが。そしたらだ。

 何故かこのチビ介どこからか手錠を持ってきて――って、マジでなんで持っていたかあとあと確認する必要がある気がするが。

 とりあえず。あれだ。逃げようと思えば逃げれた――のだが。近寄って来るチビ介。包丁持っているわ。めっちゃすごいニンニクのにおい――って、それはそれはすごいにおいで。作戦通りに俺が動いたのかは知らないが。気が付いたら。椅子に固定されており。


「とりあえず――先輩。お肉の味見します?」


 という状況に――って、マジでなんでそうなるんだよ!


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