この時はまだ大丈夫と思っていた

「ってことで、どうぞー先輩。って、前にも来ましたよね」

「前にも連れてこられた気がするな」


 なんやかんやと放課後にチビ介。後輩に捕まった俺。

 結局あの後腕を一度も離すことなくチビ介に引っ張られる形で、チビ介の乗る方の電車に乗り。そのまま数駅移動して、何度か連れてこられたことがあったチビ介の家。マンションへとやって来ていた。


 チビ介の家は綺麗に整理整頓されており。いつでも来客を迎えれますといった感じで。俺の部屋は――散らかっているので、負けた――とか勝手に思ったり毎回している。


 チビ介に引っ張られるまま俺はリビングへと連れていかれる。

 なお、チビ介のところの両親がこれまた美男美女だったりするのだが――ちなみに以前あったことがある。


「――あれ?誰もいない――」


 時間的にチビ介父は居ないかと思ったが。確か前に来た時はチビ介母が居たので、今日も居るかと思ったが――チビ介の家今日は静かだった。


「です!今日は私の城です」

「城?」

「はい。あのバカップルは――」

「バカップルって――」


 なかなかの言いようだが。実際。チビ介の両親は人前でも抱き付いたりイチャイチャしていた。という過去。俺目撃談があったりする。


「バカップルです。で、そのバカップルは久しぶりに温泉行くと言いまして、昨日から旅立ちました」

「あれ?つまり――チビ介1人?」

「ちょっと!?チビ介!?」


 あっ、ミスった。心の声が出た――が。チビ介。この程度で怒ることは多分ない――。


「あっ、悪い。心の声が出た」

「そんな風に思っていたんですか!まあチビですけど」

「うんうん。素直に認めてよろしい」


 ほら。


「むー。って、まあバカップルは新しい家族増やすつもりで、やりまくっていると思いますから」

「――あの――サラッと飛んでもないこと言ってない?」

「えっ?だって、あのバカップルですよ?暇さえあればプロレスしてますよ?」

「……もういいこの会話はやめておこう」

「先輩が発情しますからね」

「ねーよ」

「へぇー」

「――」


 このチビ介。

 こうやって周りに人が居ないとこんな感じである。

 困ったチビ介である――。


「あっ、こんな話している場合じゃなかったですね」

「誰が始めたんだか」

「まあまあ、ってことで、今日は私1人ですので、先輩に手料理をごちそうしまして――」

「しまして?」

「まあまあ」

 

 何故か照れたような?にやついた?ような表情をするチビ介。

 良からぬことを考えている気がする――。


「とりあえず、先輩。私の料理を食べれるという特権を与えます」

「――というか。チビ介が料理するイメージが……」

「またチビ介言った!今日の先輩は意地悪な日ですか――なら――私は先輩を落とします」

「何が始まるというか――なんで手料理?まあうれしいが」

「おっ、いい反応。ってことで、先輩。丼作ります」

「どん?」

「丼です」

「丼」

「はい!」


 丼。

 何丼だろう?というか、なんかワイルド?な料理が出来そう――と、思った俺。半分くらい当たりだったりする。

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