コント：奥様俳句教室

今日のお題は『トリあえず』です

　講師：「それじゃあ早速俳句の方、お勉強しましょうか？」

　生徒：「あぁ、はいぃ」

　講師：「お題はですね、『トリあえず』で考えてみてください」

　生徒：「『トリ……』」

　講師：「大竹さん、『トリあえず』ですよ。カタカナ部分を立ててもいいですし、普通に『とりあえず』と使っても構いませんよ」

　生徒：「あ、はいぃ」

　講師：「それでは、できた方から――」

　生徒：「はいぃ！」

　講師：「早いですね。それじゃ、大竹の奥様からどうぞ」

　生徒：「『とりあえず　わたしの俳句　詠（よ）んでみる』。……子供が寝込んじゃったけど」

　講師：「愚痴みたいですね。良いんですよ、俳句は自由で。最後の一言みたいのが余計だけど」

　生徒：「あぁ！　ちょっと悲しい気持ちになっちゃったもんで」

　講師：「子供さん、風邪ですか？　お大事にしてください」

　生徒：「なんか、昨日夜更かししたらしくて、今日は朝から寝込んじゃって」

　講師：「ただ眠いだけ？　言い方が紛らわしいですよ」

　生徒：「他にもできたんで、続けて発表していいですか？」

　講師：「えっ？　良いですよ。どうぞ、どうぞ」

　生徒：「悲しい俳句」

　講師：「何、悲しい俳句って？」

　生徒：「『トリあえず　ウシにもブタにも　会えません』。……肉が買えなくてごめんなさい」

　講師：「悲しいよ！　そんなにお金ないの？」

　生徒：「『トリあえず　取り合いなんか　できないの』。……そもそも取り合う肉がないんだから」

　講師：「肉買えなかったからね。他のもん食べなさい？」

　生徒：「『トリあえず　つくしを和（あ）えて　食べてみた』。……野菜も買えない」

　講師：「どんだけお金ないの？　最後の一言で悲しくなっちゃうから」

　生徒：「『トリあえず　ドリアを絵図に　描いてみた』。……食べられないけどね」

　講師：「『ドリア絵図』だろ、それ！　ドリアの絵なんか描いたら、余計おなか減っちゃうよ？」

　生徒：「『トリあえず　お金がない人　取り合わない』。……相手もしてもらえない」

　講師：「悲しすぎるだろ！　もういいっ！」

（完）