KAC20246 彼女の気持ち
久遠 れんり
なぜか彼女の機嫌が悪い
俺は結構まめに料理を作る。
今日は、仕事中から、天津飯が食べたくなり。
帰ると同時に作り始める。
ご飯は白ご飯だが、卵の中にはみじん切りのニンジン、タマネギ、ピーマンなどがレンチンしてぶち込まれカニカマも刻んで入れる。
その間に、一沸かししたたれへ水溶きの片栗粉を回し入れる。
タレは、水、酒、しょうゆ、鶏ガラスープの素、ごま油、塩、黒こしょうで作ってある。水一五〇ミリリットルに対して酒は小さじ二。少しの酢と生姜。
後は、小さじ1ずつ。塩こしょうは、ひとつまみ。
ふわとろ半熟を、ご飯にのせタレを掛けるだけだ。
とっても簡単。
サラダも作って、と、イメトレをして。
重要でありメインの卵。
それを冷蔵庫から出そうと振り返ると、ほっぺが膨らんだ彼女が居た。
とっても怒ってらっしゃる。
理由はね、わかっている。
彼女の背後には、テーブルに並んだ、料理がある。
だけどね、彼女の料理は僕にとって地雷なんだ。
周囲の人間は、彼女が料理を作っているのに、他の物を作る? それはひどい事だとという。
あまりにも言われたので、食事に招待をした。
「いや、美味しいじゃ無い??」
そうは言っていたが、その後誰も何も言わなくなった。
よくいる、間違えるタイプと違い、こだわりのある彼女は、塩をひかえ醤油を控え、すべてをひかえる。
人工調味料もなるべく使わない。
だから、食えないことは無い。
そう、極めて、プレーンでナチュラルなおいしさ。
本人はさ、「少し薄かったかしら」と言って、醤油やソース。マヨネーズを使う。
だけど俺が、それをすると、悲しそうな顔をするんだよ。
ご飯のおいしさに、助けられるが、濃い味付けのモノを食いたくなるのが理解できないかい?
「トリあえずさ。卵を取りたいから、そこを空けてくれない?」
だが彼女の怒りは、収まらないようだ。
「やだ。おかずを作ったの」
「味見はした?」
「してないけれど、レシピ通りだから」
「ホントに?」
この台詞も何回聞いたか。
トリあえず諦めて、席に着く。
「頂きます」
ほう。こう来たか。確かにレシピ通り作ったようだ。
彼女も気が付いたようだ。
妙に甘い、エビフライ。
ピリ辛のカボチャの煮物。
見た目はすましだが、醤油味のコンソメ。
レシピを見るときにページを途中で間違えたのか、色々混ざっていて見た目との違いに、少し脳がおかしくなる。
「うーん。味見はしような」
そして気が付く。スマホで複数タブを開き、見ているうちに飛ばすのがいつもの状態。
今回は、レシピが混ざった?
なぜかそんな気がした。
そのため、休日にじっくり見ることにして、その晩天津飯を作ったが文句はでなかった。
そして休日。
背中側から見ていた。
彼女は、ページを開こうが、どうしようが、全く見ず。
そして、味見もせずに作っていることがわかった。
先日のレシピ通りという宣言は、何だったのか? 気になって聞く。
「その位覚えた」
覚えていないから、混ざったんだよね。
仕方が無いから、料理レシピの暗記カードを作った。
そしたら……
彼女はなぜか、料理をやめた。
結局、料理は自分で作ることになり、来月の更新をどうしようか悩んでいる。
そう…… 彼女は派遣の家政婦さん。格安なんだよ。
KAC20246 彼女の気持ち 久遠 れんり @recmiya
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
同じコレクションの次の小説
関連小説
ネクスト掲載小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます