コポリ……──だんっ、だんっ、だんっ……。



音が鳴り止まなかった。
当たり前のように処理され、おろされ、鰻は誰とも知れない口へと運ばれて行く。


私たちだってそうだ。
当たり前のように働き、疲弊し、悶え方を知らずに喉奥を詰まらせている。


いっそ鰻のようにぽっくり逝けたらと、きっと同じような処理をされたら苦しいだろうけれど、ぽっくりと、ただの一瞬の痛みと引き換えにどこかへ運ばれて行けるのなら、その方がよっぽど美しいような気がする。


──だんっ、だんっ、だんっ……、コポリ。


たとえ美味しくもない鰻の味でも、悔しさを噛み締めるには充分な味わいだ。


きっと簡単には拭えない。
けれど、きっと簡単に洗えるに違いない。