飛び込むように誘われてしまった活字の奥には、今まさに空高く舞い上がろうとしていた嘆きの名古屋の姿があった。
──え? 名古屋って浮くの!?
私は愕然として、急いで冒頭から避難すべく三行目の「一九八◯年代」の◯の中へと逃げ込んだ。そこには随分前に難を逃れていた、ジャクソンとマドンナがいまだに座り込んでいた。
また飛ばされるから、ここから出たくても出られないんだ、と二人はしょぼくれたように俯いていた。
私は頑張って、二人の活字を◯の中から救い出そうと試みている最中だ。
独りじゃ重たくて持ち上げられない。
誰か一緒に手伝って下さい。
──どうやら私も、名古屋に飛ばされたらしい……。