雨上がりのプロミス

悠鬼よう子

雨上がりのプロミス

 雨が洋館に降り注ぎ、その音は早彩の心に深く響いていた。彼女は窓辺で、唯一の慰めである、かつての捨て猫だったクロを抱きしめながら、外の世界を眺めていた。この広い家では、クロだけが彼女に温もりを与えてくれた。しかし、母・愛莉彩アリサは、家の洗練さを何よりも大切にしており、無邪気なクロの存在は、その美学には相容れないものだった。


 ある夜、愛梨彩アリサの決断が、家族の運命を大きく揺るがした。彼女は早彩が眠る間に、クロを密かに家から追放しようとした夜、家族の運命は大きく変わり始めた。早彩の「放さないで」という懇願こんがんは、愛梨彩の支援者パトロンでもあるカイロス・ローリーきょうの介入により一時的に叶えられたように見えた。しかし、早彩の願いはかなわず、クロは静かにこの世を去った。屋敷内の重苦しい空気が、クロの純粋な心を押し潰したのだ。


 クロの死は、早彩の心に深い穴を開けた。言葉にすることすら叶わぬほどの喪失感が、彼女を包み込んだ。母・愛梨彩も、自らの選択に深い悔いと葛藤を感じていた。彼女は美学と愛情の間で揺れる心を抱え、結局、そのどちらも守り切れなかったことに苦しんでいた。カイロスもまた、早彩の心の痛みを和らげることができなかった無力さに自責の念を感じていた。彼は支援者パトロンとしての自分の役割に疑問を投げかけ、深い後悔に苛まれていた。


 洋館に柔らかな朝日が差し込み、新たな一日が始まる。窓際に座る早彩は、あしながおじさんからの手紙を手にしていた。クロの逝去が彼女の心に残した深い傷は、言葉にできないほどの喪失感と孤独をもたらしていた。早彩の心は亡き友を二度と「放さない」という戒めと、取り返しのつかない時間への哀悼あいとうに満ちていた。


 手紙を読み終えると、早彩は窓の外を見つめた。外の世界は、彼女がこれから歩んでいく沢山の可能性で満ち溢れている。クロとの大切な思い出と、あしながおじさんとかわした約束を胸に、早彩は一歩を踏み出す準備ができていた。

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