第36話 エピローグ

「いやあ、今回の事件こそは大きな利益になったね」

 そう言って、あかねは真のコラムを読んでいる。


 笹井探偵事務所では、あかねと真の二人がソファの上で、熱々のコーヒーを飲んでいた。

「まあ、今回の事件は校長先生の、あの隠蔽工作も載せました。やっぱり水野さんの自殺に大いに関与してるので、校長先生には悪いですが……」

「あの人なんか、今回の事件の発端になったといっても過言じゃないよ。亡くなった被害者に対してきちんと謝罪して欲しいね」

「合意の上でしたけどね……」

 真はそう言うと、あかねは睨んだ。


「何? 校長の味方につけるつもり? 水野さんは情緒不安定の中でそういったことをしたんだ。後で知ったら、お母さんへの承認欲求が強かったから行ったことだよ。お母さんもそして、それを知って裏をかいた校長にも責任を取って欲しいね。石留容疑者には悪いけど、彼女が逮捕されたことで全てが明るみに出て良かったよ」

 そう言って、あかねは皿の上に置いてある、あんパンを手に取り、かじった。


「それに、やっぱり、水野さんも石留容疑者も何かしら愛情を求めてたんだよ。それが言葉にできずにいろんな誤作動を犯してしまった。あたしもつむぎに対しては大事にしていこうと思う」

 真はゆっくり深呼吸をした。

「……そうですね」


「ねえ、ねえ、それよりさ。この国分って人の記事は廃校探索じゃない。これって真君も一緒に付き添ったの?」

 あかねはパンを片手に、開いた雑誌を真に見せた。

 そこには国分が書いた記事が映し出されて、真は苦笑いをした。


 あの夜は大変だった。とある廃校に幽霊が出るらしいと国分に連れてこられて、一緒に入ったのだが、国分はそこまで来るまで、真を助手席に乗せてニヤニヤ車を運転していた。


 廃校へ足を運んだ時も、薄み笑いを見せていたのだが、国分は廃校そのものに対して興味あるというよりも、廃校に足を運び怖がる真に対して、笑いながら動画や写真を撮っていたのだ。


 実際、幽霊はオーブという白い球が映っていたのだが、それを帰りに見せられて驚く、真に対しても笑っていた。

 その記事は『閉ざされた廃校……、忍び寄る何者かに驚くジャーナリスト!』と、大きな文字に真が驚いている写真だ。

 なぜ、それに社長が合意を出したのか、真は恥ずかしさを覚えていた。


「だー、見ないでください!」

 真は必死に雑誌を奪い取ろうとするが、あかねはひょいっと自分の方に雑誌を持って行って、

「良く取れてるじゃん。真君の驚いた顔!」

 あかねは爆笑した。

 その後、一週間くらいみんなにその話をされて、真は恥ずかしさで穴の中に入りたい気分であった。

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真、旅の記録 女子高生首吊り事件 つよし @tora0328TORA

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