エピローグ
53. 次なる冒険へ
あのあと、しっかり引き継ぎも行い、私はようやく自由の身になれた。
巨人族の遺跡も考古学ギルドの人に任せてきたからなんとかなるだろう。
かなり引き留められたけど、私は適任者ではない。
竜退治のあとといえば、マーシャルワンがエッセンス伯爵の元に竜を持ち込んでなにやら取引をしていた。
どんなことを話していたかは聞いていないけど、あまり深く関わらない方がいいだろう。
そして、私はというと……。
「できたぜ、嬢ちゃん。助手席の代わりにガンラックとそのウサギみたいなのの寝床だ」
「ありがとうございます。急ぎで作っていただいて」
「いや、そっちも急ぐんだろう? 特急料金ももらってるしお互い様だ」
遺跡巡りで後回しになっていたワイルドアンクレットの改造をようやく終わらせることができた。
武器の方も新しい物に買い換えたり種類を増やしたりしている。
これもまた巨人族の遺跡の発見と竜退治の報奨金でできたことで、まだ懐の中はほくほくだ。
これで旅立つ準備はできた。
エッセンス伯爵様にはあいさつを済ませてあるし、マーシャルワンとドクタースリーにもあいさつをしてこよう。
まずは、相変わらず研究機関で仕事をしているドクタースリーかな。
『ん? おまえ、この街を離れるのか?』
「うん。いつまでもここにいるつもりはないし」
『ここ以外にどこか行くあてでも?』
「ないよ? でも、新しい街に行けば新しい仕事が見つかるはず。そうやって実績を積み重ねていくことで、一人前のエクスプローラーになるんだから」
『そうか。俺もついていきたいが、ここでの研究を投げ出していくわけにもいかないしな』
「ドクタースリーは無理をしなくてもいいよ。最後のあいさつに来ただけだし」
『うーん、それにしてもこのままいかせるのも不安だ。よし、これを持っていけ』
ドクタースリーが手渡してくれたのは記録装置だ。
これってクラウピアの道具だよね?
これをどうしろと?
『今度クラウピアに行くことがあったら、それをドクターシリーズに見せろ。ワイルドアンクレットに搭載されている武器を改造してくれるはずだ。あと、お前の武器もな』
うーん、意外と物騒だった。
でも、ドクタースリーなりに私のことを心配してくれているようだし、これはありがたく受け取っておこう。
あとは、マーシャルワンだね。
マーシャルワンは……エクスプローラーズギルドにいてくれないとどこにいるかわからないな……。
「マーシャルワン様ですね。当ギルドに来ておりますよ」
「よかった。面会をお願いできますか」
「はい。少々お待ちください」
受付係の人の言うとおり、少し待ってから面会できたマーシャルワンだが、胸に勲章のような物を付けていた。
なんだろうそれ?
『ああ、これですか。竜退治の証明となる徽章のようですね。私も指揮官として参加していたのでもらうことになりました』
「なるほど。これからはどうするんですか?」
『いまエッセンス伯爵が国王陛下に取り次ぎをしてくださっているところです。そちらが済み次第、国王陛下と謁見をしてこちらの要求をお伝えします』
「……大丈夫でしょうか?」
『まあ、すんなりいかないのは覚悟していますよ』
肩をすくめながら話すマーシャルワンはどこか人間くさい。
やっぱり古代の人たちも機械兵は人間により近づけて作りたかったのだろうか。
あるいは、人を失った機械兵が人に近づこうといたのか。
マーシャルワンにも私が次の街に向かって出発することを告げると、とても残念がられた。
マーシャルワンとしては、このまま王都まで一緒に来てほしかったようである。
でも、私もいろいろとやりたいことがあるし、マーシャルワンたちが使う魔導車にはクラウピアに帰れるような改造を施すこともドクタースリーができるそうだから大丈夫だろう。
マーシャルワンには申し訳ないけど、ここでお別れだね。
『わかりました。旅の無事をお祈りします』
「マーシャルワンたちも頑張ってください」
『はい。それでは』
マーシャルワンたちとのあいさつが終われば、いよいよ次の街へと出発である。
さて、次はどの街がいいかな?
「リザーブ、お勧めの行き先はどこ?」
『そうですね。東に向かった先にある街でしょうか。街の規模も大きく、エクスプローラーズギルドの支部もかなり大規模です。何か新しい情報が見つかるかもしれません』
「わかった。じゃあ、目的地はそこで。行こう、みんな!」
私たちの旅はこれからも続く。
お婆ちゃんのような立派なエクスプローラーになるのが夢だけど、それを達成するにはどうすればいいのかわからない。
いまは、着実に実績を積み重ねるところからだね。
さあ、未知の世界へ出発!
私とお婆ちゃんの形見の車『GZ-5172 Type-W』の冒険譚 ~伝説的な名車を引き継いだ私は探検家として名を馳せる~ あきさけ @akisake
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