52. 戦闘終了後
戦いが終わったあとも機械兵たちは大忙しだ。
飛竜たちを倒したあと、蛇竜と地竜も逃げ出す前に1匹残らず始末しなくちゃいけないからね。
幸い、蛇竜は地上を逃げるので難しくなかったみたいだけど、地竜の方は地中に穴を掘って逃げ回っていたみたいなので蛇竜ほど楽ではなかったみたい。
あくまで楽ではなかっただけで、クラウピアの技術の前ではあまり意味がなかったようだけど。
素材として切り分けられた竜たちはどんどんクラウピアへ運ばれていく。
なんというか、本当に流れ作業だ。
このレベルの竜では相手にならないということか。
『ルリ様、このあとはどうなさいますか?』
「え? 機械兵の皆さんをクラウピアに送り届けるんじゃ?」
『それはもう少し後です。ほかにも危険な生物がいないか調査をさせます。その間、ルリ様はどうされますか? できれば、あまり遠くには行かないでいただきたいのですが』
私が遠くに行っちゃうといざという時にクラウピアに帰れないのか。
それは確かに心配だね。
よし、私もしばらくここに残ろう。
で、残ってる間は……やっぱり巨人族の遺跡かな。
あっちの未踏破地域を調べてみたい。
ドクタースリーの地図によると、街の中心部以外はほとんど調査が終わっているみたいなんだけどね。
『ふむ、街の中心部を調査するのか。それなら俺も連れて行け。あと、クラウピアからドクターワンも連れてこい。あいつもこういった調査は得意なはずだ』
「えっと、いいんでしょうか、マーシャルワン?」
『構わないと思います。ドクターワンとしても、見たことのある竜素材より、見たことのない古代遺跡でしょう』
「わかりました。ドクターワンと話をしてきます」
クラウピアに移動してドクターワンに遺跡調査のお手伝いをお願いしたら、すぐさま許可が出た。
明日の朝までには道具を揃えるというのだから熱の入り方が半端ない。
実際、翌朝には魔導車に詰まれた調査機材が山のように準備されていたし。
『待たせたのう。それでは向かうとしようか』
「わかりました。でも、その魔導車で来るんですか?」
『問題ない。この魔導車は近距離で転移した魔導車のあとを追って転移できる優れものじゃ。ちゃんと、転移したあとの座標位置も少しずれるぞ』
つまり、一緒に転移しても安全と。
疑ってばかりいても仕方がないので一緒に転移する。
転移した場所は、機械兵たちが作業をしているところ。
そこでドクターワンはマーシャルワンに少し声をかけ、いよいよ出発だ。
ドクターワンを伴ってやってきた巨人族の遺跡は、特になにも変わったところは……ちょっとだけあったような?
中央部に立っているモニュメントのようなもののある場所が少し輝いているようにも見える。
私は直接みたことがなく、ドクタースリーの写真で見ただけだけど、巨人族の建物の中に埋もれて立っているモニュメントだ。
ちょっと気になるね。
ドクターワンとドクタースリーも反対しないし、行ってみようかな。
慎重にモニュメントのある方へ近づいていくと、やっぱりモニュメント自身が青く光っていた。
巨人族の建物の中にあるモニュメントが輝いているのは不気味でもあり、なんだか神秘的でもある。
一体どんな仕掛けなんだろう?
『ようこそ、お客人。外の竜たちを倒してくれたのはあなた方ですね?』
急にモニュメントから声が発せられた。
柔らかい女性の声だ。
でも、その言葉は鋭い。
『ああ、そうだぜ。もっとも、俺の仲間たちがやったことだがな』
『……機械が話す? どういう仕組みでしょう?』
『俺たちは機械兵っていうんだ。はるか離れた高山の遺跡、クラウピアを守護している』
『なるほど。私たちとはまた違う文明なのですね』
『そうなるな。それで、俺たちに一体なんの用だ?』
『まずはこの周囲にいてくれた竜族を滅ぼしてくれたお礼を。あの竜族によりこの街は滅びました。いかに屈強な巨人族とはいえ、竜族と戦い続けることはできなかったのでしょう。巨人族は、この街に竜族が好む魔力波を発生させる装置を置き去りにして去っていきました』
なるほど、それで巨人族がひとりも残っていなかったんだ。
都市を犠牲にしてまで生き残る必要があったなんて、当時は相当数が多かったんだね。
『過去の状況はわかった。これから先はどうする?』
『そうですね……この街を救ってくれた英雄のひとりにこの街の管理をお任せしたいかと』
英雄のひとり、なんだか嫌な予感がする。
『さすがに機械兵に任せるのは不安ですので、管理者はそこの人間にお任せいたします』
……やっぱり私だ。
とりあえず、私が受けなくちゃいけないのは変わりなさそうである。
エッセンスの街から適任者を早く連れて来て別の人を管理者にしてもらおう。
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