51. 戦闘開始
すべての武器が送られてきた次の日の夜、ついに作戦決行となった。
最初の氷壁竜相手には機械兵10体ほどで相手をし、あと数体がバックアップを行う。
私とマーシャルワン、それにドクタースリーは後方待機だ。
ワイルドアンクレットにはいざという時に備え、閃光弾発射装置が搭載されている。
これ、使う機会があるんだろうか?
ないに越したことはないけど。
『……始まりましたね』
『ああ、離れた場所からでもよくわかるな』
「すごい音ですね」
氷壁竜の討伐開始はおそらく榴弾が炸裂したであろう音で始まった。
そのあとからも次々と爆発音が響き渡り、夜の森の静寂を破る。
何度目か数え切れていないが、ある程度の爆発が聞こえたあと、暗い空へと舞い上がる者がいた。
氷壁竜だ。
資料で見た時よりも全身の形がぼろぼろになっている。
順調に全身を破壊されているらしい。
でも、ここで飛ばれたらどうしようもない。
『拘束炎上弾、発射用意!』
『拘束炎上弾、発射用意!』
『狙い定め! ……撃て!』
森の中から鎖付きの矢が飛び出してきた。
拘束炎上弾だ。
拘束炎上弾は3発発射され、それぞれ右翼と左翼、腹部に突き刺さる。
結構いい感じ?
『放熱開始!』
マーシャルワンの号令とともに突き刺さった矢が赤く染まり始めた。
そして、鎖も巻き取られ始め、氷壁竜が大地に引きずり落とされる。
森の中に墜落するとき、木をなぎ倒す大きな音が鳴り響いていた。
本当に竜退治をしているんだ……。
『よし! 各員、とどめをさせ! 拘束炎上弾が溶けるまでが勝負だ!』
ここからでは氷壁竜そのものは見えないけど、氷壁竜が墜落した方向から何回も爆発音が聞こえ、閃光が瞬いている。
本当にこれを機に完全に倒してしまうらしい。
どれくらい苛烈な攻撃を加えているんだろう?
『マーシャルワンに伝令! 氷壁竜の討伐、完了いたしました!』
『うむ、ご苦労』
「え? もう終わっちゃったの?」
まだ最初の攻撃開始から10分も経っていないような。
そんなにあっけなく竜って倒せるものなのかな?
『ルリ、クラウピアが準備を万全に整えて臨んだ竜退治だぜ。よっぽど想定外の事態が起きない限りこんなもんだよ』
「そ、そうなんだね。竜ってもっと強いものなのかと」
『いや、強いぜ? 俺が調べた限り、いまの時代の装備だとかなり苦戦するんじゃないかな? 竜を倒すなら鱗を斬り裂くか砕くかしないとまともなダメージが入らない。エッセンスの街の研究所で調べた限りだと、いまの時代の装備は竜専用の装備でもない限りほとんどはその域に達していないそうだ』
やっぱり、本来なら竜退治って苦労するものなんだ。
そこはクラウピアの技術が何段階も上だってことだよね。
やっぱり、クラウピアってすごい。
とりあえずこの日は氷壁竜の討伐だけを行い、氷壁竜をクラウピアへ移送して次の竜を討伐するための装備を遺跡側へと運んだ。
翌日も竜退治ということになったけど、やっぱりクラウピアの兵力は竜よりも強い。
氷壁竜より弱い竜ということもあったんだろうけど、氷壁竜よりさらに短時間で2匹の竜を討伐することに成功していた。
これもクラウピアに運び、翌日の竜を退治するための装備をまた運ぶこととなる。
ちなみに、クラウピアで竜の素材をどう扱うかというと、ほとんど扱うことはないそうだ。
一部の竜の鱗や体内機関は流用が効くが、それ以外のほとんどは使われることなく捨てられてしまうらしい。
それでは、なぜ今回の竜退治で竜をクラウピアに移送しているかと聞くと、エッセンス伯爵に見せるためみたい。
このような竜がいたという証明と、クラウピアにかかればこれらの竜も軽く倒せるということを証明するためだとか。
やっぱり政治の話のようだね。
私にはあまり関係のない話だし、近づかないでおこう。
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