50. 戦闘準備
『ふうむ。氷壁竜としてはまだ大型化していない個体だな』
拘束炎上弾がすぐに使えないことがわかり、すぐさま対策の練り直しが始められた。
いままでは種族としての『氷壁竜』としてしか見ていなかったものを、個体としての『氷壁竜』と位置付け対策を練り直すことにしたわけである。
そのために氷壁竜の観測が再度実行され、個体としての特徴を精査した結果がドクターワンの発言である。
『ドクターワン、なにかいい対処方法はわかりますか?』
『やはり拘束炎上弾じゃな。だが、相手が若い個体であれば多少はやりやすくなる』
『それはどのような?』
『射出時の威力を増し、着弾後の発熱を減らす。このサイズであれば勢いで氷の層は貫けるし、発熱を減らせば拘束時間は長くなる。その分、短期決戦を仕掛けなければならないがな』
『短期決戦は仕方がないでしょう。具体的にはどうしますか?』
『強い衝撃でぶん殴るのが早い。榴弾と爆撃棍を持ち出せ』
『わかりました。装備を運ぶ手段として移動ステーションの持ち出しを申請します』
『構わんよ。機材は用意してあるから持っていけ』
どうやらマーシャルワンとドクターワンの話し合いはまとまったみたい。
戦法としては打撃力のある装備で破壊することになったのかな?
とりあえず、私は『移動ステーション』という装置を運び出すことになったのでそれをワイルドアンクレットの荷台に載せる。
でも、この機材ってどこかで見たことがあるような?
『ルリ様、どうしましたか?』
「ああ、いえ。この移動ステーションって機材、どこかで見たなと」
『それはドクタースリーが持ち出していた機材だからでしょう。あれは小型のものしか送れない装置でしたが、間違いなく移動ステーションです』
あれだったんだ。
あの機材もワイルドアンクレットから降ろしたあとどこに行ったのかわからなかったけど、どうやらドクタースリーが管理しているようだ。
装置自体は研究機関にあるドクタースリーの部屋に置かれ、マーシャルワンとドクタースリー以外は使えないようにしてあるらしい。
そもそも動力をふたりの動力源から取っているらしいので他人が扱える物でも無いみたいだけど。
移動ステーションの積み込みが終わり、巨人族の遺跡へと戻ると機械兵たちが大急ぎで移動ステーションの設置作業を始めた。
ドクタースリーもその輪の中に加わり1時間とかからないうちに作業を終える。
うん、早い。
『お、武器の転送が始まったぞ。装備が届き次第、竜狩りを始める。整備を忘れるな!』
ドクタースリーの言うとおり、移動ステーションの中からいろいろな物が流れ出してきた。
ふむ、よくわからないものがたくさんある。
これがクラウピアの装備なんだろうか?
『マーシャルワン、拘束炎上弾についてドクターワンはなんて言ってた?』
『少し改良を施すそうです。送られてくるまで少々時間がかかるかもしれません』
『そうか。氷壁竜の討伐はどうする? 夜中に行うか?』
『集まって来た資料を読む限り、夜中の方がいいでしょうね。竜たちが各自の巣穴に戻り離れているときが得策です』
『よし。榴弾だの爆撃棍だの派手な武装ばかりだからな。ほかの竜を刺激しない方がいいか』
『少なくとも飛竜はすべて討伐したいですからね。蛇竜と地竜も排除することを考えれば刺激は少ない方がいいでしょう』
やっぱり竜はすべて倒すつもりなんだ。
人にとって竜って災害クラスなんだけど、機械兵にとってはそうでもないのかもしれない。
私は……たぶんマーシャルワンと一緒に結果待ちかな。
なにもできないのはちょっと悔しいけど、竜相手じゃどうにもならないからね。
大人しく後ろで待っているとしよう。
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