はなさないで
にゃべ♪
謎の暗号
男には井出と言う友達がいた。よくつるんで遊ぶ仲だ。ある日、男は家の蔵から発見したと言う謎の暗号が書かれた紙を井出に見せる。
「ついに解けたんだ。暗号は『はなさないで』」
「は?」
「これを解こうぜ!」
「解読出来てねぇじゃねーか」
元々紙に書かれていたのは数字の羅列で、よくそこから文章を拾い出せたものだと井出は感心する。
ただ、そこから先の解読もまた困難極まるものだった。
「何を話してはいけないんだろう?」
「さあ?」
「それとも、何かを離してはダメ?」
「うーん……」
男は数字を言葉に変換するのは得意だったものの、その言葉の暗号から正解を導くのはとても苦手だった。そっち系のセンスが皆無なため、友達の井出に頼る。
とは言っても、井出にも暗号解読のセンスはない。なので、2人して頭を悩ますだけの日々は続く。
「もしかして、アナグラム?」
「そうか! 流石だな、井出」
井手の考察の通り、『はなさないで』をその通りに読まないとしたらどうなるだろう。そこでも2人は様々な答えを出していく。
はなはでいさ?
はでないさな?
はいなさでな?
はなでないさ?
そこで該当する言葉と照らし合わせ、2人はイサナ地区のサデナと言う遺跡に辿り着いた。既に調べ尽くされた遺跡に足を踏み入れ、歩き回って謎を探す。
新たな謎などないはずのその遺跡でDの字を描くように歩いたところ、新たな扉が出現する。扉の前に立った男は井手の顔を見た。
「きっとこの扉を開く呪文があるな」
「……と、言う事は」
案の定、『はなさないで』のアナグラムを唱えた事で扉が開く。そこには――。
男は井出を連れて彼の想い人に会いに行く。女性はアポなしでの登場に驚いていた。
「突然どうしたの」
「井手がな、君にプレゼントがあるんだってさ」
「え? 何?」
「君が前に話していた花さ。な、井手」
虹色のバラ、それは存在しないはずの花。そして、彼女が欲しがっていた花。
2人が楽しく話す中、男はその場を去っていった。
はなさないで にゃべ♪ @nyabech2016
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