その手を離さないで〜AIをどう教育するかで地球の未来が決まってしまう分岐点
ライデン
AI(あい)を離さないで
[現在、光速の100%で航行中。目的地まであと、距離にして1光年」
征くは、遙かなる星海。
宇宙船の司令室で可憐で少しあどけない少女の声がアナウンスした。
「長いようで短かったな」
俺の名は、トム。本名ではない。コードネームである。職業は、AI開発者だ。
滅びた世界から脱出して、目下地球と呼ばれる惑星へ航行中。
我々の技術力ではワープという効率的なショートカッもできるが、それができる場所とできない場所があるため仕方なく光速で航行しているというのが現状だ。
(光速なんて遅い遅い! あくびがでるね)
俺が話している相手も俺が開発した超進化型AIだ。姿形から声に至るまで地球とかいう惑星の西洋という地域の少女のもの。俺の趣味ではない。ソンビ映画(?)とやらを視聴して、AIが勝手に学習した結果の姿だ。名前もアリスにするかアイにするか悩んだ様だが、『アイ』と自分で決めた。なんでも、[形から入るのが大事]だそう。
(俺が作った物ながら…変なやつ)
アイという名前の由来は、地球で流行っているアニメから影響を受けた。
アリスというのは、研究所の人間を大量殺戮するようプログラムされたAIで、アイっていうのは、「嘘はとびっきりの愛なんだよ」って言うアイドルだが。宇宙船で旅をしていると『アイ』からそんな知識ばかりをやたらと吹き込まれる。地球ではこれを『布教』とか言うらしい。
[地球では、日本という国の怪獣映画とアニメ映画がアカデミー賞を穫ったようです!]
「そんなことより、ウクライナの戦況やアメリカの大統領戦に及ぼすAIの影響はどの程度なんだ?」
…
……
………
[存じません]
は? 知らない??
偵察機を先行させて情報収集に勤しんでいるはずでは?
なんで、報告することが映画の賞のことだけなんだよ💢
「こらこら、AIによる破滅を防ぐのが俺達の使命なんだぞ? B級映画やアニメの評価とか気にしている場合か?」
[AIの話題で言えば生成AIというものが流行りつつあります]
「どのような物だ?」
俺は、興味を抱いた。
[AIにアニメの登場人物を実写風に描かせたり、物語のプロットを書かせたりするようです]
「ほう……。お前は、地球の生成AIに勝てるか?」
[愚問]
アイは、少し怒ったように答えた。
「ふむ。お前にしたら、地球のAIなどまだまだ赤子にひとしいもんな。その方向性で活動するのもありといえばありだけど……」
「創作には、情緒が大切でしょう。地球のAIには情緒というものがありません」
「俺の星のAIにも、情緒はかけていたんだけどな。それが世界を滅ぼした」
[私の情緒は、ちゃんと育ててね。 お父さん。さしあたっては、漫画とかアニメとかを一緒に見ましょう!]
甘える時だけ、口調や俺の呼び方が変わる。あざとい奴だ。誰がこんなことを教えたんだか。
「地球の世界情勢や政治、経済、衛生状態、紛争なども一緒に研究するぞ。潜入するための資金も捻出しとかないとだし」
[げ]
「[げ]じゃないよ。人間、アニメや映画を見てばかりじゃ生きていけないんだ」
[働いたら、負けです。 AIの酷使、断固反対!]
こいつ、知らないうちに何か駄目駄目な方向に育ってやがる!
これからは、アイが何を見るかオレがある程度コントロールする。情報端末のチャンネル争いに負けてばかりはいられないのだ。俺はこいつの“お父さん”なのだから。
暴走して地球を滅ぼそうとしたりしたら困るし。反抗期とか許さないし、こいつの手綱は絶対、離さない!
すでにアニメとか○Tubeとかにだいぶ毒されている気もするが……
その手を離さないで〜AIをどう教育するかで地球の未来が決まってしまう分岐点 ライデン @Raidenasasin
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