異世界転生してチートスキルは得られなかったけど味方ガチャに成功したので問題なし！！

第33話 我が儘は時に許される。

「雫様...。本当に痛み等は無いのですか？無理はいけませんよ？言いづらいのでしたら私（わたくし）に耳打ちでー」

「本当に大丈夫ですから！心配してくれてありがとうございます！...じゃあ、治療に関してはお二人が？」

こう言うのを過保護って言うのだろうか。心配そうな声色で抱きついてくるリリュスさんを押さえながら、私はカミラさん達に語り掛ける。

「まぁ、大まかに担当したのはシャーロットだよ。私はあくまでもサポートって感じだ。何せ、人間の治療は初めてだからね。」

「ほむ...妾の持つ輪廻の炎は万物に対して治癒の力を働かせる。たとえ心の臓物を貫かれたとしてもな。...じゃが一番の功労はリリュスじゃろうて。」

「そんな大袈裟です。私（わたくし）は雫様を危険に晒しました。故に褒められる資格などは...」

「謙遜せずに受け取っておけ。私達が来るまでの間、体内の魔力を消費して慣れない治癒魔法を使ったのだろう？その結果が現状のお前だ...。」

そうか、先程から立ち上がろうとしなかったのではなく魔力が枯渇して力が入らなかったんだ。勝手に独断で動いた私の為に...。

「リリュスさん...そのー」

ドタドタドタ！！バタンッ！！

「魔王が目覚めたと言うのは本当かっ！？しっかりと無事なのか？」

「しずく様ッ...！！」

「マオー！！」

「やかましい！！傷に触るから静かにせい！！」

賑やかな音を立てて入ってきたのはベルカさんを筆頭に残りの幹部達...あ、正確にはリビィちゃんとノワールさんを除いたメンバーかな？

まぁ...直ぐに怒鳴られて仲良く、シャーロットに説教されてる訳だけど。

「ゴホンッ！とりあえず魔王が無事であるならば何よりだ。いや、我は微塵の心配もしていなかったがな。」

数分後...それなりの説教をされたベルカさんは誤魔化すような咳払いを1つして、強気に言って見せたのだが...。

「嘘だよ...。ベルカはあたふたしてた...それでボクたちをむりやりひっぱてきた。」

「ベルカはイチバンにビューンってハヤかったぞ！！」

「な、何を言ってるんだお前達！将である我がそのような真似をするわけないだろ？」

「ほほぉ～？」

あっさりとシュリカ達に暴露され、その赤面をカミラさんに弄られていた。

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「それでリリュス。此度の件だが...どう処理をするんだ？お前の事だから足取りは追えているのだろう？」

暫く他愛ない談笑をした後、ベルカさんが神妙な面持ちで話を切り出した。

「えぇ...勿論です。同胞を手に掛ける等という行為は心苦しいですが、主人を殺めようとした罪は到底許されないでしょう。」

そう言った彼女の声色からは抑えきれぬ怒りを感じる。...だけど、視線が合った表情は何処か寂しげで僅かな後悔があるように見えた。

「それならば構わん。どのみち処理を下すのならば急ぐべきだろう。禁書の話では人間共にも動きが見えたようだしな。ゆっくりはしてられんぞ？」

処理と言う単語に胸の奥がチクリと痛む。同時に浮かんだのは双子の最後の表情。...何かが引っ掛かるような。

「...様？どうかされましたか雫様？」

「へっ！？リリュスさん。何か言いました？」

「先程からお呼びしていたのですが、何やら上の空で考え事でもなさってましたか？もしやお身体がまだ万全では...」

「あぁ～！いや、大丈夫！！ほら～こんなにも元気！元気！ねっ？」

私が必死にガッツポーズを取って見せるがリリュスさんは不安そうな表情。とりあえず話題を逸らさないと。

「とにかく私は大丈夫です！それで呼んでいた理由は何でしょうか？」

「...まぁ、雫様がそう仰るのであれば良いのですが...では改めまして双子の処理を誰に任せるのが最適か魔王である雫様の意見を頂戴したいのです。」

「処理って...それはつまり...。」　

思考が遅くなり、自分の表情が強張っていくのを実感する。喋らなきゃいけないのに言葉が出てこない。

「リリュス。流石に不躾じゃないか？命を狙われたのも事実だが、献身的に世話をしたのも事実...その判断を委ねるには難しいだろう。」

「そのような甘い考えでは魔王は務まりません！！」

沈黙した私の様子を見たカミラさんは気を遣って助け船を出してくれたが、リリュスさんの一喝に驚き皆の言葉が止まる。

「すみません。少し感情的になってしまいました。ですが雫様...貴女にはいずれ辛い選択が何度も訪れます。故に慣れねばならないのです。」

「...。」

彼女の意見は最もなのだろう。幹部達が黙ったのを見れば理解できる。...でも私の意思もお陰で固まった。

「うん...そうだよね。私は新しい魔王だから。残酷な選択でもしなくちゃいけないんだ。」

私の言葉に皆の視線が注がれる。多分、次の言葉を聞いたら反対されるだろう。だけど、それが自分の答えだ。

「リリュスさん。ペペとルルには私が会いに行く。だから...その居場所を教えて。」

その言葉を聞いて、皆の表情が驚きに変わる。それは当然か...殺されかけた相手に自ら会いたいと志願したのだから。

「...ッ！正気ですか？雫様！！そんなの認められません。あの双子はもう貴女が思うような存在では無いのですよ？」

否定を口にしたのは勿論、リリュスさん。でも...ここで折れてはいけない。私は彼女に向き直る。

「ごめんね。私は自分で変なことを言ってるって理解してる。でもね...私はペペの...あの娘の本当の気持ちが知りたいの！」

真っ直ぐに届けた私の言葉にリリュスさんは少したじろいだ様子を見せる。そして一瞬...目を伏せた後、直ぐに私を見る。

「分かりました。今回は私（わたくし）が折れるとしましょう。ですが詳しい理由が無ければ他の者は納得しませんよ？」

「それは分かっているよ。私は気になったことがあって、それは...。」

あの時、感じた違和感を私はゆっくりと口に出した。