KAC20245 彼女の気持ち

久遠 れんり

彼女の心

 同棲をしている彼女がいる。

 彼女は、仕事場の同僚。


 職場の飲み会で、なぜか付いてきて、居着いた。


「この部屋良いですね」

 確かそんなことを初めて来たときに言っていた気がする。


 そして、経験も俺が初めてだった。


 仕事中、やっぱり松井さんて頼りになりますとか、落ち着くなんていうことを言っていた。


 物の本では、気になる男に対して言う台詞と書いてあった。

 面白い人とか、出張の時とか良いなあ、行きたいなとか。


 まあ、好きな男に言う台詞オンパレードで、そうなんだと思っていた。


 なんでこんな事をぼやいているのかというと、最近になって。

 それも腕枕の状態で、言ってきた。


「今度お見合いをするんですよ」

「えっ、なんで。俺は?」

 聞き返すよね。おかしくないよね。

 同棲して週に二回から三回エッチして……


「何ですか? 俺はって?」

「俺達付き合っているんじゃないのか?」

「えー。部屋に転がり込んだんで、そのお礼にエッチをしている人?」

「何だそれ?」

 結構真面目に、そんな感じで怒りを出したと思う。



 彼女は説明を始める。

「家って結構旧家で、自由はないんですよ。まあ、目を盗んでこんな状態ですけれど…… それでまあ、結婚相手が決まったから、帰ってこいみたいな感じで。と言う事で、楽しかったんですが、終わりです。泊めていただきありがとうございました」

 そう言って、彼女はあっさり出て行ってしまった。


 呆然とする俺。

 おかしくないよな。


 家が決めたから?

 つかの間の自由?


「何だよ」

 当然だが、俺は彼女の家へと行った。

 そうすでに、会社に報告をして退社していた。

 俺に言う前に会社には言って、手続きをしていた。


 家に行く前に周囲で聞くと、地元では本当に名士で、議員まで務めているようだ。


 ベルを鳴らす。


 日本家屋の立派な家。

 門まである。


 だけど、お手伝いさんに伝え、出てきた彼女は、顔を見るなり嫌そうな顔をする。

「何のご用でしょうか? 引き継ぎならメールでお願いします」

 そう言って、中へ戻ってしまった。


 また周囲で聞くと、相手も議員で四十歳代。

 彼女は二十五歳。


「何だよ」

 当然落ち込み泣いた。


 映画にでもあるみたいに、やっぱり私……

 そんなことを思っていた。

「だけどあれは、本気だったよな」

 ゴミでも見るような冷たい目。



 その後、会社にはがきが来る。

 むろん、結婚しましたの挨拶。



 その後、もう一度家の近くまで行った。

 あの時のお手伝いさんを見つけ、話を聞く。


「誰にもくださいね。お嬢さん本当は好きな人が居たみたいで、でも、自分の我が儘を通すと、その方にもご迷惑が掛かるからと。それはもう落ち込んで。ですが、理解してください。悩んだあげく選択をされたのですから」


 そのお手伝いさんが、何処まで気が付いたのかはわからない。

 そして、好きだと思っていてくれた事は理解できた。


 だけど…… 納得は出来ない。だが…… 悩んだ末に会わずに帰った。


 きっと、会ってはくれないだろう。

 自分を無理矢理納得させて。

 きっと、結論は出ない。いや出せない話し。

 俺は理屈をこねて、色々を飲み込んだ。

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